- 1. 薬理学的要因(*1):薬物自体の依存性や耐性
- 2. 人間的要因:個人の心理的・性格的要因
- 3. 環境要因:社会環境
- アルコール依存症の亭主の暴言・暴力にも臆することなく、お酒を隠したり、またあるときはちょっとだけならとお酒を買いに行ったりしながら、暴れた後の部屋の後片付けまで頑張ってやっている妻
- 気に入らないことがあるとすぐに暴れる引きこもりっている息子に対し、この子もいつかは変わってくれる、分かってくれると考え、息子の言いなりで文句も言わずに身の回りの世話を甲斐甲斐しく続ける母親
アルコール依存
アルコール依存については未だ専門家の間で様々な研究、議論がなされており、全体像が判明している状態にはありません。その中でも、WHO(世界保健機関)がその要因として大変重要な項目を3つ挙げています。
アルコール依存の形成要因としてあるものは、アルコールの持つ報酬効果です。アルコールによって中枢神経系が抑制されることにより得られる快体験(陽気、多弁になるなど)、もう一つは心身に抱える悩みや痛みを軽減することにより得られる快体験です。
この後者の快体験は、抱えている悩みや痛みの根本を解決しない限り、同じような快体験を求めて、連続的、反復的な飲酒へと移行します。その結果、飲酒の量が過度に増加していきます。そこから先は薬理学的な要因も大きく関わってきますが、形成要因あるいは継続要因としては、他の依存症同様に心理社会的要因が 大きく関わっています。
その依存度の指針は「薬物探索行動」の有無にあり、酒がちょっとでもないと不安、隠してある酒を家中探し回る、酒が切れたら真冬の夜中でも買いに行くなどの行動です。(=精神依存)
現在アルコール依存症の回復に最も効果的と言われているものが自助グループです。これは当事者同士がグループワークを行うことによって断酒へとつないでいこうとする活動です。
主な団体に「AA(Alcoholics Anonymous)」があります。アメリカのアルコール依存回復のための自助グループとして出発し、今や全世界に広がっています。AAでは「匿名性(Anonymous)」が重要視されます。
*1薬理学的要因
摂取されたアルコールは体内で代謝されますが、その過程で産生される中間生成物質にアセトアルデヒドというものがあります。過度のアルコール摂取を行う と、アルコール分解が追いつかず、この多量のアセトアルデヒドを産生し、それを体内に蓄積します。このアセトアルデヒドは毒物的な作用を持っており、この物質の分解が追いつかなくなると体内に多量存在する状態となり、二日酔いや悪酔い、あるいは不安や抑うつを引き起こします。
また、適量を超えて慢性的(*2)に飲酒をしている場合(=長時間、血中にアルコールが存在する状態)、血中のアルコール濃度が低くなると離脱症状という中毒様症状が起こり、その苦痛を軽減したい欲求から、また更なる飲酒を行ってしまうといわれています(=身体依存)。
*2注
アルコール依存は多量、反復的な飲酒によってのみ陥ると捉えられがちですが、個々のパーソナリティによってそれはまちまちで、決してそう多量でもなく、決していつも飲酒をしているわけではない、このような人々の中にもアルコール依存症者は存在します。必ずしも酒量と依存度は比例関係にはありません。
共依存
<定義>
他人に対するコントロールの欲求で、他人に頼られていないと不安になる人と、人に頼ることでその人をコントロールしようとする人との間に成立するような依存・被依存関係 (参考文献:『家族依存症』斉藤 学 著)
共依存とは、アルコール依存症の人間がいる家庭に起こりやすい、複数の人間の依存関係を指します。アルコール依存症に限らず種々の依存症でも起こり得る関係であり、当事者ばかりでなく、その周囲の人間までもが依存関係に陥っていることを指し示す言葉です。
依存症の当事者が依存状態でいることができるということは、周囲の人間がそれを維持させることをやっているということであり、当事者自身を支えるのではなく、依存の症状そのものの支え手として機能してしまっている状態です。
例を挙げれば、
この例から言えば、アルコール依存症者や引きこもって暴れている息子が他者(ここでは妻や母)に依存して生きているというのは分かりやすいでしょう。しかし問題は、頑張っている妻にせよ、息子の世話をする母にせよ、相手のことだけしか念頭に置いていないため、自分のことを置き去りにしており、自分自身は自分のためにどうすべきかという選択肢が失われています。これは相手を自分の思い通り動かすことに専心している、すなわちどうやって他者をコントロールするかということに囚われている状態です。
このようにして互いが互いをコントロールしようとする、依存・被依存関係が生まれてしまいます。このような関係が共依存です。
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