解決支援者の現場日記 : 旧ブログ
ひきこもり20年の当事者の生の声②
前回に引き続き青年の手記をご紹介しましょう。
テレビを見てゲームをして、CDを聴いたりラジオを聴いたりして時間を潰していくだけです。
ずーっとこんな生活で、一応は中学を卒業する形になっていますが、殆ど学校には行って
いません。他の人たちが高校に通っているのが、とても羨ましく思えました。
「なんで俺、こんなんなったんやろう」と何回思ったかわかりません。
部屋にずっと引きこもっていると、一日が長く感じるようになります。何もせずにじっとして
いるのは、かなりのストレスになっていたと思います。
現実逃避するために妄想するようになり、大声を上げたり壁を殴ったり時には母親に危害
を加えたり(殆ど脅すような感じで)金を無心したりする様になりました。
家の中でも自由に歩き回れるわけではなく、親(特に父親)が外出するか寝室に入らないと、
自分の部屋から出る事も難しい状態でした。
今の自分には考えられませんが、風呂に入るのも歯を磨くことも一週間に一回、酷い時には
二週間に一回という時期もあり、風呂に入るのは外出する前と決まっていて、よくこんな生活
をしていたなと今は思います。
(中略)
ここから生活のリズムが崩れ、いつの間にか昼夜が逆転した生活を送るようになります。
夕方の五時か六時ぐらいに起きだし、テレビを見たりゲームをしたりして時間を潰し夜中には
ラジオを聞いていました。
外出するのも、ほとんど夜になり昼間に出るのは、天神や博多駅付近の店に行く時だけ
です。
また部屋にこもり始めた頃は、母親がつくった料理や、買ってきた弁当などを食べていまし
たが、いつの頃からか食べなくなっていました。
何もせず寝ているだけでも腹は減るので、この頃は二日に一回の割合で三・四時間程外出
し、食べ物などを買い溜めしていました。
夜、暗い道を歩くのは最初怖かったです。でも慣れてくると昼間外に出る方が、苦痛に感じる
ようになります。何故かと言うと、人の目が気になる様になっていたからです。
自意識過剰だとは思いますが、外に出ると人に見られているような気がして、自分の事を
笑っているんじゃないかと思い込むようになっていました。
人の笑い声を聞くのがとても不快に思え、自分には関係なくても笑い声が聞こえるたびに腹
が立って、笑の声の主を睨み付ける様になっていました。
段々と人嫌いになり、一人でいるのが苦痛ではなくなっていました。夜は人も少ないし静か、
周りは暗いので人から見られる事も、自分の視界に人が入る事も少なくなるので、とても
快適に思えていました。そこらへんは、今でもあまり変わらないですね。
騒がしい場所も嫌いです。
で、一回りして帰ってきてから食事をしてトイレを済ませ、朝方シャワーを浴びて部屋に
こもる、ただ一日一日をやり過ごす、そんな生活をしていました。
いかがでしょうか。
不登校やひきこもりの長期化していく過程が読み取れると思います。
その日その日を漫然と過ごすようになっていきます。
考えなくなってきます。いわゆる「思考停止」状態です。
考えると憂うつになるからです。
「この先どうなってしまうんだろう?」なんて考え出したら、恐怖で気が狂いそうになりますからね。
人は「考える葦」と譬えられます。
ですから、考えることは止めないようにしなければなりません。
思考停止は、直視恐怖から来る現実逃避です。
リアル(現実)を受容できないでいるわけです。
ですから、妄想(バーチャル)の世界へ遊ぶようになっていきます。
こういうことからも、「子どもを信じて待ちましょう」といった対応では、確実に長期化を招くのです。
親御さんは同じく現実逃避ですし、アドバイスする側の支援者は、責任逃れです。
外部との接触が無くなってくると、周囲からの視線に対する怯えが強まってきます。
社会生活は、常に他者の目に自分がさらされています。
その目から遠ざかると、過敏になってしまいます。
他者から自分に向けられている目は、自分に対する評価を象徴していて、自己認識が投影され
ます。
つまり、自身、自分に対しての評価がすこぶる低い(ダメ人間、誰も必要としてくれない、笑い者)
ので、その気持ちが他者からも発せられている(投影)と感じてしまうのです。
他者を睨んだり、親への暴力などは、自己防衛であったり、自己存在の確認のために虚勢を張る
のです。
人目を避けてしまうのは、今でもあまり変わらないと言っています。
20年経った今でもです。
「子どもを信じて待ちましょう」といったアドバイスが、どれだけ無益どころか、毒になることがこれで
お分かりでしょう。
現状の問題解決のための選択肢を持ち合わせておらず、判断、決定、実行力が思考停止で無く
なっている状態の子どものやる気を待っていても、それは親の子どものやる気への依存でしかあり
ません。
つまり、子どもまかせ、子ども頼り、子どもしだいです。
現実逃避に任せていたら、どうなるかは明らかでしょう。
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