解決支援者の現場日記 : 旧ブログ
ひきこもりで浮き彫りになること
不登校、ひきこもりなどの子どもの逸脱行動が生じると、浮き彫りになってくるものに、両親間の人間
関係と、問題解決能力があります。
わが家の有事であるわけですから、当然双方の協力体制が必要なのですが、全く反対の状態を示す
場合があります。
よくあるケースは、「子どものことは、母親が見るべきだろう」と、全く関与したがらない父親です。
せいぜい関わったとしても、「おまえが甘やかすからだ」と母親を非難し、「いい加減にしろっ!」と
子どもに説教するぐらいです。
これでは、状況は改善されるどころか、問題の焦点がそれ、と言うよりも、新たな火種を作ってしまい
かねません。
こういった背景には、親自身が、責任の所在が明らかになり、自身が傷つくのを避けたいという思い
もあります。
何かが間違っていたということを突きつけられることが怖いのです。
人は、恐れていたことがまさに起こってしまうことも恐怖しますが、気づかぬところで問題が進行し、
これまでの生き方や価値観を覆されるであろう事件が起こってしまうと、無意識の内に目をそらしま
す。
それを見てしまうと、今までの自分を否定されてしまうように感じるからです。
そうしたことから、子どもを刺激することを一切避け、表面的に穏やかな状態を維持することにつとめ
ようとする傾向が多くあります。
ひきこもりを終わらせたいと思う反面、子どもを動かそうとして、反発されたり、抵抗されたりすること
は、避けたいのです。
自分が傷つきたくないからです。
これまでの事例でも、家の中での事であればなんとか動くと、祖父母の介護や親自身の病気の看病を
してもらい、気がついたらひきこもりが20年近くになっていたというケースがあります。
家業を好きなときだけ手伝わせ、必要なだけのバイト代を与えていた事例もあります。
これらは、親と子互いが、最重要な問題を脇に置いてしまったがためです。
「考えないでいたら、いつか問題が無くなるような気がしていた」と言った青年もいます。
これは、問題を受容できない親も同じで、「いつか動き出すんではないかと淡い期待をしていた。まさか
こんなに長くなるなんて」といった言葉もしばしば聞かれました。
目先の安定を優先させ、時の経過による「ひきこもり」という問題の深刻化の予測が立てられていない
のです。
時の経過により、当事者のみならず両親の年齢も共に重ねられます。
定年を迎え、経済的にも、健康的にも、本人の生活を支えることがより困難となってきます。
本人も、何らの人的、時間的制約を受けない環境で何年も過ごしてしまうと、伸びきったゴムのように、
弾力を失い、わずかな負担にも耐えられなくなってしまいます。
花は落ち、枝は枯れても、土中の根が生きていれば、必ずまた花を咲かせます。
逆に根腐れしていれば、幹から倒れます。
土中の見えない部分(本質的な問題)を疎んじていると、大きな代償を払わなければならなくなります。
現状改善のために能動的な行動を促すと、いやがる。反発する。落ち込む。という理由で、何も刺激
しないままに、過ごしている場合が少なくありません。
中には、「相談に行ってみようと呼びかけたが、いい返事が返ってこなかったので様子を見ていました」
と、数年たってから、当協会に再び来られ、「なんとかならないでしょうか?」と訴えられることもありま
す。
いい返事が返ってこないことは当たり前のことで、無意味なことです。
あたかも、自分が動かないでいい口実を作ってもらっているようなものです。
その数年の間に、先ず親がやるべきことをやって、根っこ(問題の本質)をしっかり観て、自分が傷つく
ことを避けることなく(わが子のためですから)、創意工夫をしながら、たゆまず働きかけを続けていかな
ければなりません。
夫婦で責め合ったり、あなた任せにしている場合ではないのです。
わが子のひきこもりであぶり出された問題こそ、しっかり受け止め、見直し、改めていけば、必ず、
解決していきます。
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