解決支援者の現場日記
ひきこもり(不登校)~「中高年ひきこもり」考察①
1月1日のメルマガでもご紹介しました精神科医斎藤環氏の著書「中高年ひきこもり」について
私見を述べていきたいと思います。
氏は、「社会的ひきこもり」を著し、ひきこもりの第一人者と称されているほど影響力をもった
方だけに、読者に誤解を与えかねない記述に対して、支援者の立場からあえて異論を述べて
みたいと思います。
支援者は長期化をくい止めることが最大の使命ですので、25年間にわたる活動実績をエビデンス
として数回に分けて論じていきたいと思います。
最初に申し上げておきますが、当事者家族、関係者は是非「中高年ひきこもり」(幻冬舎新書)
は買い求められて、このブログを読んで頂けたらと思います。
一般書として、いつになく(失礼)私のような者でもとても読みやすい内容になっています。
さて、全体を読んでと言うよりも、最終結論としての斎藤氏の論調は、あまりにも社会の偏見を
強調し過ぎた、ひきこもり擁護論になっていると感じました。
氏は、「私は、ひきこもりを未然に防ぐべき、すなわち予防すべきだとは考えません」と述べています。
「ひきこもりもいる明るい社会」を目指すとあります。
ひきこもりを否定的に見る社会の目があるから減らない。
社会の目が変われば(偏見が無くなれば)激減すると。
果たしてそうでしょうか?
傷ついた人間にもっと寛容な社会であるべきだということで「苦しければ休養し、他人に助けを
求めることができる緩い社会」を示しておられるのだと思いますが、それはもちろんその通り
ですので、ひきこもりはあってもいいのですが、ただ、ひきこもらなくていい自己を創ることを
推進していくべきだと私は思います。
ひきこもらなくて済めばそれに越したことはありません。
ひきこもりは、ただの休養とはわけが違うのですから。
当人たちは、やむに止まれず引きこもっています。
偏見、差別を無くすことでひきこもりを減らしていくというのは、飢えているから食糧を与える
というようなものです。(それが必要な段階ももちろんあります)
それよりも、食物自体を育てていく手立てを提供していくことこそ必要ではないでしょうか。
つまり、「ひきこもる必要のない人々の社会」を目指すことで、偏見、差別はそのままあっても、
ひきこもりは無くなっていくと私は思います。
斎藤氏の見解に限らず、昨今のメディアの論調は、ひきこもり者たちの声を度外視して、
「ひきこもりたいのは、認めてあげなければかわいそう」といった意思を感じます。
彼ら、彼女らの声を聴いてあげてください。
10年も20年も誰が好き好んでひきこもりたいなんて思っていますか。
自分が自分のままでいることを認めてほしいと、慟哭しています。
彼らが口をそろえて言うのは「普通になりたい」です。
斎藤氏も、「自傷的自己愛」を苦しみの中心に抱えていると、苦しみながらひきこもっている
と解説している一方で、「たまたま困難な状況にあるまともな人」と、ひきこもりを休養程度
に捉えているようにも感じられます。
斎藤氏との見解の違いは、実態の捉え方の違いからきているものと思います。
「ひきこもる必要のない人々の社会」がどういう社会か、これから述べてみましょう。
(続く)
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