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解決支援者の現場日記 : 旧ブログ トラウマ: 2008年6月

無自覚な過去の傷み

不登校やひきこもりの相談を受けていますと、あらかた学校でのいじめや失敗体験、人間関係

のもつれなどが引き金となり閉じこもりだしたという話があります。ともすると、これらの出来事が

原因としてとらえられてしまいます。しかし、これが本質的な原因である場合はほとんどないと

いっていいでしょう。中には、前髪を自分でハサミで切り損なったのをきっかけに6年間ひきこ

もった子もいます。もちろん原因は他にありました。

こうとらえてみてください。

500段の階段を一気に駆けあがり、頂上に着いてみたら10段ぐらいの跳び箱があり、「これを

跳んだら終了」と言われたら、さすがに跳べませんね。いつもだったらなんでもない跳び箱でも、

足がガクガク震えてぶつかって崩れ落ちてしまうでしょう。

きっかけとなった出来事は、本来だったらつまづきの原因にもならなかったはずのことです。

それがその時には精神的に跳ね返せるだけの余力が無かったということです。よく「そのくらいの

ことでなんだ!」と親や周囲の大人たちから出ることからも分かるでしょう。

ではなぜその時、それだけの抵抗力がなかったかを考えてみる必要があります。それが先ほど

の500段の階段です。つまり、すでに相当のストレスをそれまでに抱えていたということです。自身

の許容量をはるかに上回るだけの心的ストレスを抱えていて、それがきっかけの出来事によって

あふれ出したというわけです。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)もトラウマを受けた数年も後に突然発症する場合があると言わ

れています。

では、許容量を超えるほどのストレストラウマがどの時期、どこにあったか。それを知ることが

回復の手助けをするためにも大切です。多くが日常の、その子にとってはあたりまえの生活の

中で受けた傷の場合です。

日常とは言っても、本人にとって決して軽々しいものではありません。むしろ、深刻なダメージ

をあたえているものが多いのです。しかし、慢性的なダメージは、本人すらその影響に気づけ

ないでいる場合が少なくないのです

不登校やひきこもりの理由を親が尋ねても答えないことが多いですが、その理由がここにあります。

きっかけになる出来事の多くは、叱責批判排斥など自身を否定されるような場面です。

自己の存在をうとんじられる周囲からの言動などにより、こころの心棒がポッキリ折れてしまうのです。

ですから、それまでにあったものは、自分を自覚できず、足元が揺らぎ、周囲からの自分に向け

られる評価に過度に怯えているといった状態です。「居場所がない」と言いますが、自分がここに居る

意味を見いだせずにいる状態なのです。

こういった状況で、先のような場面に遭遇するともろくも崩れ落ちます。

では、これまでにそういった背景をどこで作ってしまったのかを親御さんには考えていってほしい

のです。

 

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わが子を理解する

医療の現場では、「病気」は診るけど「病人」を診れる医者は少ないといったことが言われるそうで

す。なぜこのような病気になったのか、その人そのものを理解することが治療にとって不可欠だと

いうことです。

不登校やひきこもり、ニートは、病気ではない分、よりこの本人を理解するということが、回復への

要となります。なぜそのような生きにくい生き方をあえて選んでしまったのか。

当事者にとっては、傍から生きにくいと見えている生き方が、それ以前の生きかたよりまだましだ

からです。それだけ以前の生きかたは、生きにくく、生き辛かったのです。

それはなぜなのでしょうか。

私がご相談者によくお尋ねするのは、「ひきこもりが解決したら家庭の中は全てOKですか?」とい

うものです。この質問の回答に先ほどの質問の答えが実は隠されています。

わが子のひきこもりが解決したら他に何も問題がないという家庭であれば、恐らくひきこもりは生じ

なかったでしょう。

わが子を理解するためには、その子の生きてきた背景を観察しなければなりません。

なぜ生き辛さを感じて生きてきたのか。

人はどのような状況で生き辛さを感じるのでしょうか。考えてみてください。

あなたは、自分の存在を誰も気づいてくれなくて平気でいられますか?

あなたは、誰からも必要とされず、愛されずに平気でいられますか?

あなたは、自分の価値を実感できずに平気でいられますか?

あなたは、自分を伝える手立てを持てずに平気でいられますか?

あなたは、恐れずに心を開ける相手がいなくても平気でいられますか?

あなたは一人で平気ですか?

 

学校に行かない。働かない。閉じこもる。

その状態の修復に終始しているうちは、わが子を理解することはできないでしょう。

学校にあって家庭にないものは? 働くことに求められるものは? 家族とは違い他人とのかかわり

に必要とされるものは? 家族だからこ負わなければならないものは?

これらのことを考えてみてください。

 

今日の相談者からもこんな言葉がもれました。

「どうしてこんなに長くなってしまったのか。もっと早くに動いていれば」

10年のひきこもりも最初の一日から始まっています。

なぜすぐに動かなかったのか。あなた自身の背景を理解してみましょう。

 

 

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不登校、ひきこもりが意味するもの

不登校やひきこもりという状態は、必要なあたりまえ(とうてい耐え難いといったものではない)の

ことが、できなくなってしまっている状態と言えます。

当事者としての青少年たちの心の中にあるものは、恐れであり、怒り、憎しみです。

この恐れや怒り、憎しみが、必要なあたりまえのことすらできない状態にしてしまっています。

決して自分は周囲から必要とされないであろうという絶望的な恐れから、外界と関わることを拒絶

し、孤独感をさらに強め、ありのままの自分でいさせてもらえなかったことに対して、激しい怒りを

かかえているのです。

何ものかを求め、得られぬ時、人は怒りを覚えます。それは、得られぬことでの傷みをまぎらわせ

るために、怒りのエネルギーにすり替えるのでしょう。

その得たいものが、限定された相手からのものでなければならない場合、その相手が自分にそれ

を与えてくれなかったという、もうひとつの傷を受けてしまいます。

その得たいものが、自分を無条件に求めてくれる愛情であったとするならば、相手である親に対し、

怒りから憎しみへと変質します。

自分が自分のままで生きていくことを許されぬということは、自分ではない他の人間でないと必要

とされない、愛されないという絶望感と同時に、そのままの自分は無価値であるという強烈な自己

否定感を心に刻みます。

そういった青少年たちは、自身のそれまでの生き方自体を呪っていることも少なくありません。

自分といったものを際立たせる外界(他者の存在)は、彼らにとって、恐怖以外の何ものでもありま

せん。あたりまえの世界ですら、息をすることさえままならぬ空間となるのです。

「こんな私では、なおさら受け容れ難い子どもなのでしょうね」と自虐的に怒りを表現し、閉じこもっ

ていきます。と同時に、この子らは、「私はあなたから愛されることが必要なのです。ありのままを

認めてもらいたいのです。なぜなら私はあなたの子どもでありたいから」と声無き声を発信してい

るのです。

 

 

 

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秋葉原通り魔事件

今日の新聞にも秋葉原の事件が大きく報道されていました。

携帯電話の掲示板に、事件に至るまでの経緯を実況中継のように書き込みしていたとのこと。

犯罪心理学などの識者が、「ゆがんだ自己顕示」と分析していました。

書き込みの中で私の目に留まったのは、

「小さいころからいい子を演じさせられていたし、騙すのには慣れてる」

「いつも悪いのは全部俺」

「隣の椅子が開いている座らなかった女の人が、2つ隣が開いたら座った。さすが、嫌われ者

の俺だ」

という部分です。

これらの書き込みから、なぜこれほど歪んだ形でここまで自己顕示しなければならなかったの

かが、見えてくるような気がします。

今朝、TVのワイドショーで流れているのが少し耳に入りました。容疑者の生い立ちに関わるもの

だったようです。

「作文も絵も親がかいたもので賞をとりました」

「親の検閲が入っていました」

「実力がある弟の方が成績を取り出してからは、親の関心は弟に移りました」

容疑者の母親は、非常に教育熱心で、子どものテストの点数を話題にするほどだった。

容疑者が短大に行ったことを近所には隠し、有名大学に進学したと嘘を言っていた。

近日には週刊誌等にも掲載されると思いますが、これが真実だとするなら、先の書き込みの内容

は、十分理解できます。

小さいころからいい子を演じさせられていたし、騙すのには慣れてる

きっと、成績もよく、聞き分けのいい子を親から要求、いや強制させられていたのでしょう。

その家で生き残っていくためには、それに従うしかなかったのでしょう。

「隣の椅子が開いている座らなかった女の人が、2つ隣が開いたら座った。さすが、嫌われ者

の俺だ」 こういった内容は、私は支援活動の中で出逢った青年たちからよく聞かされます。

ありのままを許されなかった子どもたちが、社会生活の中で周囲から批判されたり、否定され

る機会に遭遇すると、すべてを自分に結びつける「関係妄想」や「被害妄想」が強くなってしま

う傾向があります。

もちろん、だからといって容疑者のおこなったことが赦されるわけではありません。

若い犯罪者を生み出す背景を考えなければならないと思うのです。

犯罪という形で、他者をも巻き込み自分に制裁をくわえたい若者たちが生まれてくる、その元型

(アーキタイプ)を知るべきだと。

犯罪者予備軍って、日本にはたくさん居る気がする

容疑者のこの言葉に、社会はただ批判するだけでいられるのだろうか?

 

 

 

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干渉ではなく、関心をもつ

慣性の法則」というものがあります。

不登校やひきこもりで、ある程度の期間を過ぎてしまうと、ほとんど生活スタイルに変化がなくなりま

す。これは、当事者のみならず家族もそうです。部屋にいるのがあたりまえという状態です。

毎日の生活に変化をつけていくことが大切です。また、昨日と今日と何が違っていて、何が同じか

に気づくことも重要です。

変化に応じて、本人へ問いかけていく。変化を促すための質問をする。

その内容とタイミングを間違えると、単なる干渉になってしまいます。

変化に気づくためには、「観る」ことが必要です。見るではなく観るんです。観察、洞察するのです。

そしてしっかり子どもの声を聴き、どの視点から視ればいいかを判断する。

家族が先ず気づきから反省し、同じ過ちを繰り返さぬよう学び、問題解決を決心し、行動を起こす。

行動を起こせば、次なる気づきをえることができます。この繰り返しにより、事態はいやでも好転

してゆきます。

では何を変化させていくべきか? それは習慣です。

 

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家族モビール

私たちの身体は、ホメオスタシス(恒常性保持機能)によって、生体内部環境が自動調整されていま

す。家族という有機体もまた、家族平衡という形であるバランスを保とうとします。これを私はモビール

で例えています。モビールは、全体でバランスを保っている飾りですので、どこかひとつでも飾りを

とってしまうと、その飾りだけが落ちるのではなく、全体が崩れてしまいます。つまり、すべてが関

わりあって保たれているバランスです。

家庭は、それぞれが安らげ、和める環境を望み生活しています。そういう面では同じ方向の共通の

目標です。ところが、そこへ至るための方法がそれぞれの立場で微妙に変わってきます。

そこで、ある家族にとっては望まれるものでも、他の家族にとっては、不都合な場合も生じます。

それぞれの都合、思惑が違うということです。

そこに互いの「誤解」というものが生じ、この誤解から家族間の葛藤が発生するのです。

誤解のもとに傷つけあうことは悲劇です。

心の疲労にいち早く気づくのは、自身の身体です。身体はとても正直で、自分が気づいていない

心のシグナルをきちんとキャッチしています。生理機能の不調という形で、心の危険を知らせてく

れます。

それと同じように、家庭のアンバランス(不具合)をいち早く知らせてくれるのが、子どもたちの逸脱

行動です。子どもたちは、家族の救援者として、"揺り戻し作用"を無意識に担ってくれています。

家庭にあっては、親の思惑の方が優位です。したがって、そこには無言の強制力がはたらき、

また子どもの領域への侵入が繰り返され、子どもたちは実存性(存在の尊厳性)を脅かされ、ありの

ままを拘束されるのです。

ありのままを許されなかった子どもたちは、やがて生まれ直しを渇望します。それが胎内回帰とし

ての「ひきこもり」です。

 


家庭から笑い声は消える?

今全国で、児童養護施設や一時保護所が窮地に追い詰められているといいます。

その最大の理由が、虐待相談件数の急増だそうです。(週刊東洋経済)

一時保護所には、虐待を受けた子や非行の子らが一緒に保護されており、虐待を受けた

子たちが怯えたり、ストレスから職員に暴力を振るうケースもあるといいます。

また、乳児院では、「飛び込み出産」(妊婦が健診を受けないまま出産する)が増えたことで、

児童相談所でのアセスメントをまったく経ずに入所を迎えることで、乳児院がHIVなどの

感染症のリスクにさらされているといった指摘もあるそうです。

こういった中、北九州市子ども総合センター(児童相談所、同市戸畑区)の一時保護所で、

非行などのために保護した少年を鍵をかけた個室に閉じ込めていたというニュースがありました。

センターによると、保護している他の子どもや職員に危害を加える恐れのある中学生や

高校生の男女を「静養室」と呼ばれる個室に入れ、外から施錠していたとのこと。

厚労省の指針は「身体の直接的拘束」や「一人ずつ鍵をかけた個室におくこと」を禁じている。

センターの幹部や職員は禁止行為と知りながら、他の子どもに危害を加えたり施設の設備を

壊したりした場合に「やむを得ず外から施錠していた」ということです。

確かに人権問題ではあるのでしょうが、一施設だけの責任云々の問題ではない気がします。

社会的背景こそを考えていくべきではないでしょうか。なぜこういった施設が満杯状態になるのか。

親から暴力を受け、見捨てられ、あるいは穏やかな家庭のようにあっても、親の欲求充足の

道具にされたり、自己判断、選択を許されなかったり、家族の顔を見るより携帯の画面を見て

いる時間が長い子どもたち。この子らの家庭に笑い声は戻ってくるのでしょうか?


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