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解決支援者の現場日記 : 旧ブログ 家庭問題: 2011年10月
ひきこもり20年の当事者の生の声④
ひきこもり現在進行形の青年の手記最終です。
引きこもり後半は基本的に頭の中が、ボーっとしているような状態が続いていました。
父方のおじいちゃん、おばあちゃんが亡くなり、母方のおじいちゃんとおじさんが亡くなった
時(当然葬儀には出てません)も、両親が癌になった時も何も考えず、自分とは関係ない所で
起きている事の様な感覚でした。多分感情(喜怒哀楽)も顔の表情も無くなっていたでしょう。
もう如何でもいいと思っていた割には、潔癖症は相変わらずでした・・・。
でも母方のおばあちゃんが倒れた時、現実に引き戻されたように思います。
特におばあちゃんは優しかったと思います。
十代後半辺りには家で顔を会わせる事も無くなっていました。こんなのが孫ですからね、顔
見せなんかできません。見舞いも行く事も無く今に至ります。
自分の周りで、少なからず関係のあった人たちが段々亡くなって行く。
何時か自分が一人になってしまった時の事を考える際になった時、本気で死を意識し出した
のかも知れません。そういうことを考えると更に動けなくなって行きました。
(中 略)
〔楽に・確実に・簡単に〕そんな事ばかり考え、ほんと生きる事よりも死ぬ事に一生懸命でし
た。外出する時には、玄関の前で息苦しくなり出て行くのに、ドアの前で深呼吸をして勢い
をつけないと、外に出れなくなっていました。外に出ても妄想・思い込みが出て、周りの人間
が敵に見える・感じる様に、自分だけが孤立しているような感覚になる、そんな感じがして体
が固まってしまう、何度もそういう感覚に襲われて自分の中の感覚が、変になって行ったよ
うに思います。
ニュースで引きこもりの人と思われる人が、親を殺したり、逆に殺されたりする事件を目に
する事があります。自分自身も頭の中で、親を殺したり、逆に殺されることを考えてしまって
いました。
外でもおかしな感じで、家から店、店から店までの記憶が抜けてたり、冬の夜寒い中何を
する訳でも無く、ボーっと突っ立っていた事も有りました。
そのうち頭の中は、常に霧がかかっているような状態になって、思考が鈍くなります。
説明するのが難しいのですが、血液検査でサラサラした血液と、ドロドロした血液があれば、
自分の頭の中はドロドロの状態で、自分に話しかけられても、自分のことととれない、他人事
のような感じがして、自分が自分でないような感覚でした。
しまいには、何も可笑しい事も無いのに笑えて来たり、外で仲の良さそうな家族連れを見て、
微笑ましく思えたりしたのに、次の日には酷く憎らしく「何お前らは笑っているんだよ」と敵意
丸出しで思ってしまっている自分がいました。
今となっては、「馬鹿じゃねえの」と思いますが、この時は、もしもの為に死に場所を探しに、
近くの山に登ったりしていました(笑)。
首吊りの予定でしたが、実際登ると首が吊れそうな木が無い!そのうち死ぬのも面倒にな
ってしまいまた何も考えない様にしていきました。
もう死にたいというよりも、消えてしまいたいという感じになっていました。
ボーっとする状態は、今も何故か寒い時期になると、こんな感じになる事も有ります。
身内の冠婚葬祭に出席しないケースはよくあります。
ひとつは、現状のことを根掘り葉掘り聞かれることがいやだからです。
下手すれば、説教だってされかねません。
この青年も「こんな孫ですからね」と言っているように、恥辱感から到底顔向けが出来ないという
ことです。
父親の定年や両親のどちらかの死などがあれば、さすがに動き出すだろうとっいった考えも多く
聞かれますが、現実はあまり期待できません。
東日本大震災の折、津波から逃げなかったひきこもり当事者もいたぐらいです。
30代となれば、多くが父親は定年を迎えています。
ですが、その多くが定年前から ひきこもっています。
現状認識、現実検討が困難な状態にありますから、人ごとのようにしか取れなくなってしまって
います。
母子家庭で、10年ほどひきこもっていて、母親は体に障害をもっているにも関わらず、「母は心配性
ですから、私は何も悩みはないので、母をカウンセリングしてあげてください」と言った30代の国立
大学出の青年もいました。
青年たちが「死」を口にする時、それは「存在を消し去りたい」といった気持ちを表していることが多い
ようです。
「死」そのものを望んでいるというよりも、今の存在を消して、別の存在になりたいということです。
いじめ自殺が頻発した時に、今時の子どもの死生観などが報道されていたことがあります。
「死」を考えるのは、苦しみから逃れ、一度死んで次にいい境遇に生まれ直したい(再生)ということ
が言われていました。
「死」そのものは、未知の領域ですから、あくまでも自分が想像するものであって、食べたことがない
ものを「おいしいから食べたい」と思わないのと同じで、経験していない「死」を望むのではなく、“今”
をリセットとして、白紙に戻したいということです。
「社会へ入るためには、過去の記憶が全て無くなるか、別の人格にならない限り無理だ」と言った
青年もいました。
目的は、リセット(特に失敗体験による傷つきの)です。
ですから、死を願ったからといって、すぐにそうするわけではありません。
未知の「死」に向かうことは勇気のいることですし、死ぬための痛みは恐怖でもありますから、それが
抑止となります。
毎日毎日「くだらねー・糞つまんねー」が口癖の様になっています。
周りの人は一体何が楽しくて生きているのでしょうか?
毎日しらけた感覚しか無いような気がします。
やっぱり俺、自分も含めて人間があまり好きじゃないみたいです。
生きていくことに意味を見出せなければ、生きていく意欲もわきません。
青年が最後に記した「自分も含めて」好きじゃないと述べている、ここに約20年間のこの青年の
生き方を招いてしまった本質が表されていると思います。
「人間があまり好きじゃない」というのは、20年間がこうさせたでしょうし、こうでも思わなければ
辛いからでしょう。
人の温もりを期待し求めれば、それが得られない現実が恨めしくなります。
「人間が好きじゃない」と自分に言い聞かせ、いっそ求めない方が少しでも傷つかないですみます。
この青年は、中一ギャップが原因と始めに書いてありましたね。
急激な環境変化に適応できず、その後20年間、今もなおひきこもり生活から脱することができない
原因がそれだけだと思いますか?
そもそも環境変化に適応できなかったのは何故か?
「自分が好きじゃない」というのが、その答えです。
自分を肯定できなければ、自分を大切に出来ませんし、雑に扱います。
自分の価値を見出せませんので、誰からも必要とされないと感じるでしょう。
誰からも関心をもってもらえず、自分を待ってくれている人がいないと感じる人間が、苦労をしながら
生きていくことに意味を見出せるでしょうか?
「周りの人は一体何が楽しくて生きているのでしょうか?」
生きていくことへの意味を見出せなければ、 充実した楽しい日々を過ごしている人間の感覚は、
到底想像もつかぬことだと思います。
痛みから回避する生き方を選んでしまうと、人生の味わいも感じられなくなります。
そうすると、
「くだらねー・糞つまんねー」
といった言葉しか出てこなくなるのは、言わずもがなです。
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(NPO法人 地球家族エコロジー協会) 2011年10月25日 16:55
ひきこもり20年の当事者の生の声③
引き続き青年の手記をご紹介します。
長くひきこもっていると、いろんな所に支障が出て来ます。
健康と対人関係など自分の場合もおかしくなっていました。
まず対人関係、性格にもよるんでしょうけど、とにかく喋れない、もともと喋る方では無いの
で、人と喋らなくても何てことは無かったのですが、必要な時に声が出なくなります。
家にいても親とも顔を合わさず話さない、話がある時でも会話は必要最小限だったので、
外で慣れない人と話す時は、緊張して相手の目を見れない・思った事が口に出て来ない・
大きな声が出せなくなって、挙動不審に見えたと思います。
情けない話ですが、年相応の知識・経験・常識も無く、一人では役所関係の手続き一つ出来
ません。
たまにテレビで、自宅で亡くなった親の遺体をそのまま放置して、逮捕された人が「如何した
らいいのか分からなかった」と供述したというニュースを見た時、「あー自分もこうなるな」と
思う事もありました。
(中 略)
次に今でも続いている癖というか病気というか、なかなか治らない事があります。
妄想癖と潔癖症です。
まず、妄想癖、多分引きこもる前からやっていたと思います。
まあその頃は子供が自分の将来の夢を思い浮かべるような程度、引きこもってからは現実
逃避の手段として、起きている間はずっと妄想をしていました。
現実はダメ人間でも、妄想の中では超人ですよ(笑)。
筋トレの最中も、歯医者で歯を削っている最中も妄想妄想・・・・・。
そのうち妄想のし過ぎで、現実かどうか分からなくなる・妄想をコントロールできなくなるよう
になってしまいます。
(中 略)
引きこもっている間に、世の中ではいろんなことが起こっていました。
湾岸戦争が起きたり、阪神・淡路大震災が起きたり、二十一世紀になったりと、色々・・・。
自分は何も変わらず、ただ年を取っただけ、二十歳になり三十も超えても、何も変わらず
いました。
毎日毎日何の刺激も受けずにいると、無気力・無関心・無感動と何に対しても興味がなく
なって、如何でもよくなってきます。
自分の誕生日すら、なんとも思わない・考えない、思考自体が停止してしまう状態でした。
動作も遅くなり時間だけがかかって、今まで出来ていた事も出来なくなって行きました。
よく引きこもると、そこで時間が止まってしまうと聞きますが、何も変わらないんじゃないん
です。
何もしないでいると、知力・体力とも退化する一方です。
引きこもっていても、日頃から何かしている人と、何もしていない人では能力的にも、意識的
にも違ってくるのは当然だと思えます。
それは本人の性格か、周りの環境の問題かは分かりませんが、人間生きて行くには、何ら
かの刺激が必要みたいです。
死んでいるみたいに生き、寿命が終わるのをただ待っていた感じでした。
では、解説しましょう。
私が現在関わっている青年の中にも、二年以上も声を発していない青年がいます。
声どころか、顔すら家族に見せていません。
私とはいつも筆談でカウンセリングをしています。
また、人から中傷されたことをきっかけに、自分から人を避け、会話をしなくなってひきこもり、数年
経って会話の要領を得なくなってしまった青年もいます。
この青年は、「挨拶をされてもどう答えていいのかすら分からなくなった」
「声をかけられただけで、緊張から嘔吐してしまうようなこともあった」と言っていました。
前回も妄想、思考停止についてはお話ししました。
この手記の青年も言っているように、妄想の中では超人にもなれます。
昼夜逆転でネット依存になっているようなひきこもりのケースでは、より現実と妄想の区別がつかず、
仮想の世界にいってしまっている危険な状態もあります。
妄想は、考えているというよりもイマジネーション、想像の世界です。
ビジョンとして、そこに遊泳しています。
考える。思索するといったことは、ほとんどやらなくなってきます。
死んでいるみたいに生き、寿命が終わるのをただ待っていた感じでした。
この言葉は、ひきこもり状態の青年たちの心の中をよく言い表していると思います。
ひきこもりは、社会的には「死」を意味しています。
生きていることは、食事や睡眠をとっていれば自然と身体が生命を生かしてくれています。
自分でやっていることは、口に食物を放り込んでいることだけで、あとは全て身体が生命を維持して
くれています。
そういう意味では、生かされているんです。
私たちは大したことはやっていません。
しかし、生きていく。より良く生きていくためには、主体的な努力が必要です。
ひきこもる傾向にある若者たちは、変化への適応が困難な者が少なくありません。
ですから、変化を避けようとします。
また、新たなことへの挑戦は、失敗を伴いますので、失敗からの傷つきを過剰に避け、何もしない
という選択(それがひきこもり)を取ります。
結果、小さな失敗を避けたために、大きな失敗(ひきこもりによる代償)をしていることに気づけない
でいます。
また、時の経過といった変化にもうとくなり、年齢に応じた覚悟、責任感がもてず、自分が置かれて
いる社会的立場の認識ができず、「ひきこもりは何か迷惑でもかけているでしょうか?」と臆面もなく
主張します。
40代で、年金生活者の両親に扶養されていてもです。
依存的にしか生きられなくなっているので、より良く生きていくための主体的努力ができず、まさに
死んだように生きるしかできなくなっているのです。
食事と睡眠をとっていれば、生きながらえることはできます。
しかし、生命は生かされているものですから、それだけではそこに主体的な我がありません。
生かされている意味を自覚する。その意味を実現するためのはたらきをしていくことが生きていく
ということではないでしょうか。
人は様々な価値観をもって、意味を感じ取り、主体的な自由な選択ができる生き物です。
それが人としての尊厳性とも言えます。
その尊厳性を失いかねない、ひきこもるという生き方を見過ごしてはならないのです。
社会的な死の淵にある青年たちを再生(よみがえり)させていくことは、急務の課題です。
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(NPO法人 地球家族エコロジー協会) 2011年10月11日 09:00
ひきこもり20年の当事者の生の声②
前回に引き続き青年の手記をご紹介しましょう。
テレビを見てゲームをして、CDを聴いたりラジオを聴いたりして時間を潰していくだけです。
ずーっとこんな生活で、一応は中学を卒業する形になっていますが、殆ど学校には行って
いません。他の人たちが高校に通っているのが、とても羨ましく思えました。
「なんで俺、こんなんなったんやろう」と何回思ったかわかりません。
部屋にずっと引きこもっていると、一日が長く感じるようになります。何もせずにじっとして
いるのは、かなりのストレスになっていたと思います。
現実逃避するために妄想するようになり、大声を上げたり壁を殴ったり時には母親に危害
を加えたり(殆ど脅すような感じで)金を無心したりする様になりました。
家の中でも自由に歩き回れるわけではなく、親(特に父親)が外出するか寝室に入らないと、
自分の部屋から出る事も難しい状態でした。
今の自分には考えられませんが、風呂に入るのも歯を磨くことも一週間に一回、酷い時には
二週間に一回という時期もあり、風呂に入るのは外出する前と決まっていて、よくこんな生活
をしていたなと今は思います。
(中略)
ここから生活のリズムが崩れ、いつの間にか昼夜が逆転した生活を送るようになります。
夕方の五時か六時ぐらいに起きだし、テレビを見たりゲームをしたりして時間を潰し夜中には
ラジオを聞いていました。
外出するのも、ほとんど夜になり昼間に出るのは、天神や博多駅付近の店に行く時だけ
です。
また部屋にこもり始めた頃は、母親がつくった料理や、買ってきた弁当などを食べていまし
たが、いつの頃からか食べなくなっていました。
何もせず寝ているだけでも腹は減るので、この頃は二日に一回の割合で三・四時間程外出
し、食べ物などを買い溜めしていました。
夜、暗い道を歩くのは最初怖かったです。でも慣れてくると昼間外に出る方が、苦痛に感じる
ようになります。何故かと言うと、人の目が気になる様になっていたからです。
自意識過剰だとは思いますが、外に出ると人に見られているような気がして、自分の事を
笑っているんじゃないかと思い込むようになっていました。
人の笑い声を聞くのがとても不快に思え、自分には関係なくても笑い声が聞こえるたびに腹
が立って、笑の声の主を睨み付ける様になっていました。
段々と人嫌いになり、一人でいるのが苦痛ではなくなっていました。夜は人も少ないし静か、
周りは暗いので人から見られる事も、自分の視界に人が入る事も少なくなるので、とても
快適に思えていました。そこらへんは、今でもあまり変わらないですね。
騒がしい場所も嫌いです。
で、一回りして帰ってきてから食事をしてトイレを済ませ、朝方シャワーを浴びて部屋に
こもる、ただ一日一日をやり過ごす、そんな生活をしていました。
いかがでしょうか。
不登校やひきこもりの長期化していく過程が読み取れると思います。
その日その日を漫然と過ごすようになっていきます。
考えなくなってきます。いわゆる「思考停止」状態です。
考えると憂うつになるからです。
「この先どうなってしまうんだろう?」なんて考え出したら、恐怖で気が狂いそうになりますからね。
人は「考える葦」と譬えられます。
ですから、考えることは止めないようにしなければなりません。
思考停止は、直視恐怖から来る現実逃避です。
リアル(現実)を受容できないでいるわけです。
ですから、妄想(バーチャル)の世界へ遊ぶようになっていきます。
こういうことからも、「子どもを信じて待ちましょう」といった対応では、確実に長期化を招くのです。
親御さんは同じく現実逃避ですし、アドバイスする側の支援者は、責任逃れです。
外部との接触が無くなってくると、周囲からの視線に対する怯えが強まってきます。
社会生活は、常に他者の目に自分がさらされています。
その目から遠ざかると、過敏になってしまいます。
他者から自分に向けられている目は、自分に対する評価を象徴していて、自己認識が投影され
ます。
つまり、自身、自分に対しての評価がすこぶる低い(ダメ人間、誰も必要としてくれない、笑い者)
ので、その気持ちが他者からも発せられている(投影)と感じてしまうのです。
他者を睨んだり、親への暴力などは、自己防衛であったり、自己存在の確認のために虚勢を張る
のです。
人目を避けてしまうのは、今でもあまり変わらないと言っています。
20年経った今でもです。
「子どもを信じて待ちましょう」といったアドバイスが、どれだけ無益どころか、毒になることがこれで
お分かりでしょう。
現状の問題解決のための選択肢を持ち合わせておらず、判断、決定、実行力が思考停止で無く
なっている状態の子どものやる気を待っていても、それは親の子どものやる気への依存でしかあり
ません。
つまり、子どもまかせ、子ども頼り、子どもしだいです。
現実逃避に任せていたら、どうなるかは明らかでしょう。
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