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解決支援者の現場日記 : 旧ブログ 不登校 21ページ目

親子の共同作業

前回の記事で、ひきこもりが長期化してしまって、自分たち亡き後のわが子の生きていくすべ、生きる

糧を案じているその親自身が、その長期化に一役も二役もかっているという事実について、少しお話し

してみましょう。

 

わが子が不登校なり、ひきこもり、ニートとなってしまった場合、やはり育てた自分たちに、何か落ち度

があったのではという反省心が出てまいります。

ですが、具体的に何がどう適切でなかったかというのは、よく分からない部分ですので、「甘やかし

過ぎたのか」「厳しすぎたのか」といったぐらいでしか振り返れません。

 

でもどこかが誤っていたのだろうということで、自責感から自分を責めてしまうところがあるのです。

生真面目なタイプの親ほど、時には自虐的とも思えるほど自分を責め立ててしまっている場合が

あります。

 

しかし、ここが危険なところなのです。

自分を許さないという態度は、罪悪感を幾分和らげるという効果があります。

これは、何か周囲に迷惑をかけ、反省しなければならないような場面で、平気な顔をしていられるか

を考えてみると分かると思います。

自分を責めることで、逆に周囲に対する負い目を軽くすることができるのです

 

つまり、わが子の苦悩の解決よりも、自身の感情処理を優先させてしまうということです

これは、誰にでもありうる人心の弱さ、悲哀といったものでしょうか。

 

またさらに長期化の誘引となってしまうことは、自分がわが子に対して、誤った対応をしてしまったと

過度に自戒してしまうと、償い、もっと言うとあがないの行動を取り始めてしまうことです。

 

わが子をひきこもらせってしまったと過度に反省しすぎると、何かで償おうとします。

親としての償いで最も形として現れやすいのが、「世話をする」という行為です

自己犠牲的なあがないを始めます。

 

ルームサービスよろしく毎回の食事を部屋の前にもっていったり、住居を別に借り住まわせ、そこに

食事を運ぶといったことを延々と繰り返したり、毎月10万円以上の仕送りをしてひきこもり生活を

支えるといったことです。

 

このように、親自身は自覚がないまま、不登校、ひきこもりを長期化させ、ニート状態を容認して

しまう結果となります。

そして、「ひきこもりのわが子を残して、死んでも死にきれぬ」とアンビバレンスな状態に陥ってしまう

のです

 

 

 

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引きこもり打開したい

年が明け早々に傷ましい事件が起こりました。

昨日、千葉県市川市欠真間(かけまま)で、17歳の通信制高校一年が父親を刺し殺した事件です。

調べに対し、この少年は「引きこもりを打開したくて刺した」と供述しているとのこと。

 

中1の後半から不登校だったそうですが、昨日のTVニュースでは、小学生のころは、明るくクラスの

人気者だったと報じられていたようです。

今朝の新聞には、事件前日にインターネットの掲示板に本人と思われる書き込みがあったと記されて

いました。 内容は、

 

愛する父を殺そうと思っています

明日にはすべて結果が出る

これは一時的な衝動。人間としては決して父を嫌ってはいない。いや嫌ってはいるけれど

 

以前のブログhttps://www.interbrain.co.jp/blog/2008/11/post-64.phpで、私は、芹沢俊介氏の

「引きこもるという情熱」の中で、氏が引きこもりの失敗と称して、自らが主張する「正しい引きこもり

ができなかったら、凶悪犯罪者にもなってしまうといくつかの事件を引き合いに出し述べていることに

対して、一部のメディアや氏のような評論家たちが、ひきこもり=犯罪者予備軍といった誤ったイメージを

社会に与えていることに強い憤りを感じるということを述べました。

 

また、https://www.interbrain.co.jp/blog/2008/11/post-65.php で私は、昨年3月に岡山駅のホーム

であった18歳の少年による突き落とし事件にふれ、少年と父親との関係が事件を誘引したことについ

て述べました。

 

今回のケースでも、少しずつ詳細が明らかになっていくでしょうが、事件の当事者がたまたま不登校や

ひきこもりであったということで、不登校、ひきこもりが、事件を起こし易いといったことではまったくあり

ません。

 

しかし現実には、こういった事件が報道されると、「下手に本人に説教したり、刺激するのは良くない

から、黙ってほっておいた方がいい」といった軽薄な考えに至ってしまうことも少なくないようです。

 

先のhttps://www.interbrain.co.jp/blog/2008/11/post-64.php で私は、ただ待つことは、問題の

見送先送りにしか過ぎないことをお話ししました。

これはかえって、事態を深刻化させ、結果的にこのような事件を誘発させることになりかねません。

今回の少年が言っているように、まさに衝動的にです。

 

少年は、「人間としては決して父を嫌ってはいない」と記述していますが、

「決して父を嫌ってはいけない」という意味が込められているような気がします。

その後に「いや嫌ってはいるけれど」とあるからです。

愛する父」とも言っています。

 

ニュースでも、父親とは決して仲が悪かったわけではなかったように報じられていました。

「嫌ってはいけない」と思えるほど、父親に対して感謝や慕っていたところがあったのではないでしょう

か。

その一方で、うとましく思えるところがあったのでしょう。

岡山の事件の少年のような、父親への信頼感の裏返しだったかも知れません。

 

今回の少年は、引きこもりを打開したいことを動機として述べています。

であれば、この父親が引きこもりから抜け出せない理由になっていた可能性があります

 

父親が抜け出せない理由に?

怪訝に思われた方も多いかも知れません。

 

しかし、実は“ひきこもり”という現象は、親と子の共同作業によって長期化するのです。

つまり、わが子がひきこもり、「思うようにならない」「親亡き後この子はどうなるだろうか・・・」と苦慮し

いる親自身が、長期化に一役も二役もかっているということなのです

 

かねての支援活動の中でも、第三者の介入が始まり、まさに本人に変化が現れだしたとき、親がその

変化を留めようと障壁になる場合があります。

これをオートパイロット現象と言います。

ひきこもりの状態から変化が始まろうとすると、これまでのひきこもりの元の状態に自動的に戻そうと

してしまう現象です。

 

わが子がひきこもっていることがあたりまえ自然な普通の状態となってしまっているのです。

そこから外れると自動操縦(オートパイロット)で元に戻すのです。

もちろん、親にはその自覚はありません。

だからこそ、怖いのです。

 

 

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新年を前にして

この記事が、今年最後となると思います。

今日は一日がかりでクリスマスのイルミネーションの片づけをし、明日は大掃除です。

明後日は実家へ家族と帰ります。長女、二女は正月も仕事だそうで、本当にご苦労様です。

 

先日、新聞で情けない記事を見ました。

大分にある宇佐八幡宮の古札納札所に、生ゴミや関係ないゴミが投棄され、今回から廃止されると

いった記事です。宇佐八幡宮は、全国の八幡神社の総本宮です。

大分の教育委員会の教員不正採用が今年発覚されましたが、なんとも嘆かわしいニュースばかり

です。大分県民の皆がそういう人間ではないのでしょうが。

他の神社でも同じような状況が増えてきているそうですが、日本人のモラルはどこへいってしまったの

でしょうか。

 

ご神札とゴミを一緒にできる神経が理解できません。

お札をモノと見ているのでしょう。古くなったからゴミに出す。そこに何のためらいも無いのでしょう。

 

伊勢神宮に参拝した折に西行法師によって詠まれた有名な歌があります。

何事のおはしますをば知らねども かたじけなさに涙こぼるる

大自然の息吹に生命力、意志を感じ、恐れ畏む感性が今の日本人に無くなってきている気がします

 

以前ある神社に参拝した時に、観光客と見られる若いカップルが、遠くから賽銭箱に小銭を投げ込み、

手も合わせずに「ヨロシクッ!」と走り去った光景を目の当たりにし、愕然としたことがありました。

 

若者たちが悪いのではありません。

まともな教育も出来ず、そんなふうにした親が悪いのです。

 

生かされている生命に支えられて生きている」という感性をもった親、大人たちが今どれだけ

いるでしょうか。

神社は大自然をお祀りしている場所です。

「えっ、神さまじゃないの?」「自然を祀るって、どういうこと?」

こんな声が聞こえてきそうです。

 

私たちは天体の影響を受けている「宇宙の子」であり、自然の中に生息する「自然の子」です。

日頃は「世間の子」だけを意識して生きていませんか?

だから世間体ばかり気にかけ、大事なものを見過ごしているのです。

 

世間体から体裁ばかりとりつくろい、わが子が不登校やひきこもりといった自己治療的な行動でSOS

を発信しても、世間体を優先させ、ひた隠しにし、わが子の訴えはなおざりにされます

 

「お天道さま」「お月さま」といったように、古人は自然を崇めていました。

「お天道さまが見てござる」が、生活の中での倫理観の規範となっていました。

 

初詣ではいい機会です。

自己を超えた力の存在の前に額ずき、自己の無力を悟ることが大切です

わが子をコントロールしようとした傲慢さが、子どもたちの個性、存在価値を奪ってしまったのです

 

子どもたちは「自然の子」です。天分を引き伸ばしてあげるのが親の役目です。

親の身勝手な期待で、わが子をコントロールしようとしてしまえば、わが子から暴力や依存で支配され

ることになるのです

 

生かされていることに感謝し、身を慎み、関わりあうすべてのもの(人も物もわが子も)を敬い、

お蔭さまで、ありがとうございます」という謙虚さをそなえれば、子どもはあるがままに真っ直ぐ育

つのです。

 

来年も、より多くのご家族とのご縁を大切にして、家族再生の場づくりを一所懸命やっていきます!

一年間ご購読誠にありがとうございました。

皆さまのご家庭が良き年を迎えられますことを心よりお祈り申し上げます。

 

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大切にしたいもの

今年一年を振り返る時期になってきました。

今年は、私自身の今後を方向付けるようないくつかの出来事がありました。

この一年を踏まえ、来年はまた、新たなことへチャレンジしていきたいと思います。

 

ゆにわの会https://www.interbrain.co.jp/yuniwa/ が今月開かれました。

「ゆにわの会」は自助グループです。単なる当事者家族の慰めあいの場ではなく、自らを助けられる

学びをしていく場です。

 

今回のテーマは、〈“大切にする”という発想をもつ〉という内容でお話ししました。

大切にすると、大切にしたものから自分が大切にしてもらえます

何か不満が出たときに、自分がそれを大切にしているかを振り返ってみると、不満の原因が必ず見え

てきます。

 

人を大切にする。これは一番分かり易いと思います。

大切にされるとその相手も大切にしたくなります。

大切にしないということは、粗末に扱うということですから、粗末に扱われて平気な人はいません。

ニュースでは連日のように派遣切りの話題が取り扱われています。大切にされていないという不満

は、深い悲しみと激しい怒りを生みます。

 

物を大切にする。例えば、職人さんは道具をとても大切に扱います。

道具から大切にされるというのは、長く使えますね。いつまでも役に立ってくれるということです。

それこそ、名人になればなるほど、道具と体が一体化し、匠の技を生みます。

 

事を大切にする。事というのは出来事や機会(経験・体験)です。

楽しいことも苦しいことも生きていれば色々なことがあります。

禍福はあざなえる縄の如し」まさに人生いろいろです。

そのひとつひとつの事を大切にするということは、活かしていくということです。

活かしていけば、自分の成長の糧となります。

 

時間を大切にする。時間のを高めるということです。時間は誰にも平等にあります。

1時間という長さ()は誰にとっても同じです。しかし、その使い方()は違います。

何のためにその時間をあてがうかです。

時間は、黙っていても、動かずにいても絶えず消費しています。

時間の質を高めれば、ワインやお酒を熟成させるように、自身を円熟させていくためのエネルギーと

なります。

 

空間(場)を大切にする。自分が居る環境、所属している場(グループ)を大切にします。

環境から受ける影響は私たちの心理面に大きなはたらきかけがあります。

森の中にいる時と、コンクリートの壁に囲まれている時とでは全く違いますね。

また、学校やクラス、職場、サークルといった場は、様ざまな機会を私たちに提供してくれます。

場を大切にすることでの恩恵はそれは大きなものがあります。

場を大切にする始めの一歩は、掃除、整理整頓です。

乱雑な空間は、心や頭の中も混乱させます。

 

廻り合せを大切にする。時間と空間の交点が廻り合せです。

ある瞬間、ある場所で、何事か何者かと出会う。

廻り合せが悪ければ、交通事故や通り魔にも出会ってしまいます。

廻り合せを大切にするということは、「」を大切にするということです。

人間は、自分以外の誰かと関わりあうから人間です。関わりあう別の誰かがいるから「」があるん

です。

その「間」をとりもつのが「縁」です。

大才は袖すり合う縁をも活かす』という柳生家の家訓もありますが、「縁」を大切にすることで、

人生がより良くなっていきます。「とかくこの世は縁しだい」です。

時間と空間を大切にしていくことが、廻り合せを良くしていく方法です。

また、シンクロニシティ(意味の有る偶然の一致)も頻繁に起こってきます。

 

そして最後に人生を大切にする。

人生そのものを大切にしていけば、人生から自分が大切にされます

身に起こることはすべて必然の結果。必要だからこそわが身に起こる

こう心がけて生きていけば、なぜわが子が不登校になったのか。ひきこもってしまったのかの訳が

分かり、親として、一人の人間として大きく成長でき、家族の絆が深まり、温もりのある家庭となって

いくでしょう。

人生があるゆることを教えてくれるのです。

 

 

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心のこもった届け物

13日の「正月事始め」が過ぎ、ますます気ぜわしい時期になってきましたが、時節がら届け物があり

ます。その中に特にうれしいものがあります。

当協会を卒業していった青年からのお歳暮でした。

 

何がうれしいかって、頂いた物ではなく、彼らが自分が働いて得た給料から送ってくれたということが

うれしいんです。

これまでも初任給でプレゼントを贈ってくれた青年もいました。

わが子が働きだした時もうれしかったですが、これまで関わってきた青年たちが、それぞれ自立して

いく姿を見ていくことは本当にうれしいことですし、少ない中から心遣いをしてくれることは有難く思いま

す。とても意味の有る重みの有るものです。

お金のありがたみも、自分で働いて得られてこそ分かるものです。

来年の目標に結婚をあげている青年もいます。もちろん相手がいるからです。

フロイト(精神分析)の言葉に「健康な人間に出来ることは、愛することと働くこと」というものがあ

りますが、それが生きていくということではないでしょうか。

 

はたらくとは、傍(周囲)を楽にすることです。そこには周囲(他者)への思いやり、心遣いがあります。

人を愛すればこそ、人の役に立ちたいと思い、自己犠牲をもいとわぬ崇高な精神が芽ばえます。

 

最近、インターネットで配信され世界中に感動を与えた、高速道路で車に引かれた犬を引きずって

助け出そうとしている犬の映像が話題を呼びました。犬だったからこそ、なお感動を呼んだんでしょう。

昔「反省だけなら猿でもできる」というのがありましたが、あれは芸です。この犬は自らの意志(?)で、

仲間の犬を助けようとしていました。

 

人を愛すること、そして愛される喜びを知ること、自分の個性を活かして他者の役に立とうとすること、

手にしているものが多くの他者からの与えられたものだということに感謝し、そして健全な自己愛、

自己信頼感を抱くことが「豊かさ」というものでしょう。

子どもたちに親が伝え残すべきものは、この「豊かさ」ではないでしょうか。

 

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笑顔は心を温めます

昨日、当協会で自立訓練を行っている30代の青年たち数名と忘年会を行いました。

31歳から39歳まで、お酒と料理を味わいながら、楽しいひと時を過ごせました。

一番うれしかったのが、彼らの笑顔です。

素直なとてもいい笑顔でした。

日頃、自身の過去を振り返りながら、苦悩する表情を浮かべることもあります。

皆、自己に向き合い、現実を直視し、トラウマを超えて、自身と自信を取り戻そうとしている青年たち

です。

だからこそ、その穏やかな笑顔が見えた時、こちらの心まで温かくなってきました。

「笑う門には福来たる」と言いますが、本当に幸福が届けられた思いです。

今日は、21歳の青年が、簿記2級の合格通知を持ってきました。

今回は合格率26%だったそうです。

誇らしげな表情がたのもしく見えました。

会計の仕事に携わりたいという希望を聞き、私自身が税理士事務所に勤務していたこともあり、資格

取得を勧め、今回取得しました。

高校を中退し、アルバイトをしながら通信制を卒業、ここまで頑張ってきた青年です。笑顔が消えてい

た時代もありましたが、次はFP(ファイナンシャル・プランナー)の資格に挑戦するとはりきっています。

来年開けてから、いよいよ本格的に就職活動を始めます。

これまでも不安を乗り越え、挑戦する青年たちの姿に幾度と無くこちらが励まされました。

彼らのの笑顔と成長ぶりが見られるから、この仕事が辞められないのでしょう。

 

 

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不登校・ひきこもりの解決とは?

私共のような施設に対して、どういった支援をしてもらえるのかといった質問があります。

恐らく、この質問の裏には、「学校に戻してくれるのか」「部屋から出してくれるのか」「就職を見つけて

くれるのか」といった期待が含まれていると思います。

それに応えることを目的としている支援施設もあるでしょう。

「あたりまえではないか」と思うかも知れませんね。

しかし、私共は、それはプロセスの通過点ととらえています。

 

学校に戻す、部屋から引き出すを解決したと見なしてしまうことは、とても危険なことです

本人なりの何事かの理由があってその状態になっているわけですから、その理由を解決しない限り、

たとえ表面上学校に戻ったり、外出できても問題は残されています。

 

機能不全家族の定義には、「家族機能が適切にはたらかず、問題解決能力が低いので、家族の

発達的、状況的危機に際して、的確な対応ができない家族」とあり、いくつかあるその特徴の中には、

家族の問題を解決するためのコミュニケーション・スキルが劣っている〉〈家族に他人が入り込むこ

とへの抵抗感が強く、地域・社会、友人などとのかかわりが少なく、閉鎖的で孤立している。家族が

危機的状況に直面した際、周囲から支援が受けにくい〉といったものがあげられています。

 

最も感じることが、問題解決能力ということです。

解決以前に、何が問題かという状況把握からが十分でありません。

このことは何も当事者家族だけではなく、「引き出し人」と言われている支援者側にも見られることも

あります。

だから、まさに引き出すことに懸命になるのでしょう。

 

私たちは、どれらの問題が複合的にあいまってその状態を導いてしまっているのかを探っていきます。

けっしてどの家庭もひとつきりではありません。あたりまえの話であり、逆に問題のない家庭などあり

得ないでしょう。

もし、「わが家には何も問題なし」と思っている家は、地下のマグマがその出口を見つけて勢いよく噴出

すのを気づかずにゆったり過ごしているようなものです。

 

どういった問題が先ずあるかを端的に知る方法があります。

それは、わが子の不登校、ひきこもりを前にして、解決のために家族の一致協力がはかられているか

を見てみるといいのです。

必ずといっていいほど、足並みが揃っていません。両親間にもかなりの温度差があります。

この辺りがより本質的な問題であり、改善要素なのです。言ってみれば、ここが子どもの不登校、

ひきこもりを誘引したようなものです。

 

私共が支援していく過程では、先ず当事者本人以外での不具合を調整していくことから始める場合も

少なくありません。

目の前の状態を受け入れられず、親の方が情緒不安定となり、子どもに対して適正な対応ができない

状態にある場合があります。ある時はうつ。ある時はPTSD(心的外傷後ストレス障害)といった状態の

時もあります。重度の共依存状態で、支援の妨げになる場合もあります。

こういった場合は、先にこれらの問題を解決していくことから始めなければなりません。

 

不登校、ひきこもり・ニートの解決のためには、「問題を解決していく」といった視点が重要です。

単に傷ついた心を癒していって、元気を回復させるという考え方では、長期化していくだけです。

ましてや、「出口の見えない病気、障害だからあきらめるしかない」といった考えは、断じて持っては

ならぬと私は思っています。

この世にかけがえのない存在として生まれてきた子どもたちの、その生きている意味、尊厳性を失わ

せることは誰であっても許されるものではありません

漠然とした問題を整理し、具体的にひとつひとつ解決していくのです。

子どもたちから投げけられた問題を読み解き、囚われた価値観を解放していくことで、家族再生、人生

の取り戻しがかなっていくのです。

 

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人生の大前提

不登校やひきこもり・ニートの青年たちと日頃接している中で私は、人の人生の起点を見る思いがしま

す。

彼らの今の状態の意味を探索していく作業を本人と行っていくのですが、自身も気づけずに来ていた

現状の自分を導いた訳を知りえた時、青年たちは自己革新のスタートラインに立てます。

 

人の行動は、必ず本人にとって何らかのメリットを感じる方に動かされます。そのメリットというのは、

主に不安や恐怖からの回避である場合が多いようです。

自分自身を自虐的に否定することにも本人なりのメリットがあります。

何の取り得も能力もない自分は社会から必要とされない

こういった言葉もよく聞かれます。ここでのメリットは何でしょう?

 

「前提」にあるのは、社会参加への怖れです。ですから、自分が社会に受け入れられない妥当性が

確保できれば、その怖れから逃れられるというメリットがあるのです。

だからこそ、過剰なほど自身をおとしめます。それほど社会への恐怖心が強いということです。

ではその恐怖心はどこから来ているのかと言いますと。

これが自分自身の存在の根源に関わる部分であることが少なくないのです。

 

ある事例をご紹介しましょう。

小学生のころ、担任の先生と母親が通っている塾のことで意見の衝突があったそうです。

「先生の言うことはしっかり聞きなさい」とかねてから母親から言われていただけに、信頼している先生

と母親との衝突は、何が正しいのかといった基準をぐらつかせました。

そして「僕が学校に行かない方がいいんだ」と判断し不登校が始まりました。

そしたら今度はその不登校のことで、家庭で両親が衝突するようになりました。父親が母親を責める。

そういった光景がよく見られるようになってから、この少年は自分の存在そのものを否定し、「僕は生

まれてこなかった方がよかっんだ」という思いにかられました。

以降、家庭の中でも誰かが誰かを否定するという状況を見るにつけ、周囲の誰を信用していいものか

が、全く分からなくなってしまいました。

 

この青年は、小学校低学年の時のこの体験から、「自分の存在は家庭、この世(社会)に必要では

」という前提が刻印されてしまいました。

自分の素行や成績のことで、両親や周囲の大人が衝突しあう場面をよく見る子どもたちに多いのが、

この自己存在の否定です。「自分がいるから悪いんだ」「自分さえいなければ」と思い込んでしまい

ます。

この「前提」がこの青年にとって人生の起点となってしまったのです。 

 

人生の起点に刻印されたものは、成人してもなお、影響を与え続けます。

何かを頑張ろうとした時、心の奥から「そんなことしてもムダだよ」と口をはさみ、手も出してきます。

なにげに自分を否定されたような時、フラッシュバックで不安感や恐怖感がこみあげてきます。

 

私たちは、そもそもの人生の大前提を見直す必要があります。

「前提」が生き方の基準となって、あらゆる行動、考え方、感じ方が制限されるのです

 

いま目の前にうずくまるわが子に、どういう「前提」を与えてしまったのかを振り返ってみてください。

そして、あなた自身がどういう「前提」でわが子を育てたかを見直してみてください。

きっと解決策が見えてきます。

 

 

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『たけしの日本教育白書』から

先日テレビ番組で『たけしの日本教育白書』がありましたが、ご覧になった方も多かったと思います。

かなり長時間の番組でしたので、ビデオに録画しておいたものをようやく観ることができました。

 

その中で、今年3月に岡山駅のホームであった18歳の少年による突き落とし事件が取り上げられて

いました。列車を待っていた38歳の男性が、突然背中を押され線路上に転落。列車にはねられ死亡

したという事件です。

 

番組では、加害者少年の父親のインタビューと、事件後その父親に宛てられた少年からの数十通の

手紙が公開されていました。

 

その中で印象に残った箇所を考えてみます。

この少年が事件の動機、きっかけになったのは、父親のある言葉だったと述べていました。

もう頑張らんで、できるところからやったら

この言葉に対して少年は、「お父さんにとってはなにげないことだったかも知れないけど、俺は

傷ついた。これが一番痛い言葉だった」と述懐しています。

恐らく視聴者の多くが、「これぐらいのことで何を傷つくのだろう?」と感じたことと思います。

ここで大切なことは、その言葉が誰から発せられ、言葉を受けた者にとって何を意味していたかなの

です。

少年は、「間違いなく見放す言葉だった」と述べています。

 

私は何を頑張ってきたのか。お父さんは何を見てたんですか?

「『勝手に自分の好きな所(会社)を選んで、きたえろと言われた時、本当に孤独になってしま

った。唯一のつながりだったお父さんとの関係を絶たれて、何もすがるもののない自分は

どうすれば・・・・・

だからやけを起こした

 

少年の言葉からも分かるように、少年と父親の関係は決して悪くなかった。

少年は小学校から中学校にかけていじめにあっていたようです。そのため、父親は少年を守るため

に外で遊ばせず、ゲームを与え過保護になっていた。

少年は「お父さんが友だちより好きだった」と言っていたそうですから、よほど頼りにしていたので

しょう。

 

その父親から、見放されたと感じたのですから、絶望以外のなにものでもありません。

少年は勉強ができる「よい子」だったようですが、自分をクズ、ゴミと言い「12歳で置いてきたもの

がある。勇気というものを置いてきた。とりえが必要だった。誰かに必要とされる。だから

大学に行く」と進学の希望をもっていました。

しかし、経済的理由から大学進学を断念せざるを得ず、自暴自棄になってしまったのでしょう。

 

なぜ勉強を頑張っていたのか。大学へ進みたかったのか。

父親は気づくことができなかったのです。

 

不登校、ひきこもりの青少年たちもいじめを経験した者が少なくありません。

いじめは周囲から疎外され、人間の尊厳性を揺るがされる体験です。

自分が周囲から求められて(愛されて)いないと思い込まされた人間は、自身を肯定することができな

くなります。人や社会に怯え、身を潜める生き方を選びます

人を殺せば刑務所に行ける

少年にとっての居場所は、そこにしかなかったのでしょうか。

 

お父さん、お母さん、私の変わるべきところは有りますか?教えてください」と少年は結んでい

ました。

 

 

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見守りか見送りか

前回に続き芹沢俊介氏の「引きこもるという情熱」から、問題点をあげてみましょう。

氏は、『少年育成』という雑誌の中でのある座談会の記事をあげ、「待つ」という保護的な関わり方だけ

ではなく、「押し出す」姿勢が必要と述べています。この座談会は、フリースペースの主宰者たちが、

フリースペースを離れたある青年が「この五年間何をしてきたんだろう」「もっと早く出ておけばよかっ

た」という感想をもらしたことから、通所年限を決めるようにしたという内容で、要はひきこもりの場所が、

自宅からフリースペースに変わっただけという事例です。

 

氏はこれに共感しつつも、押し出すタイミングが大切と述べています。

私は、ここにひきこもりが長期化していることや、支援施設を出た後も次の行動を取れない青年たちの

訳が見えた思いです。

 

待てば確実に長期化します。理由は前回述べました。

では、押し出すか?

なんとなく時期を見はからって押し出したところで、本人は途方に暮れるでしょう。

社会に参加できるだけの状態に導いてあげた上で、本人の意志で巣立たせるべきだと思います。

私の所でも、ある施設で四年間カウンセリングを受け、このまま社会へ参加できる実感がもてず、

カウンセラーに相談したところ、「私の手にはおえないから精神科にでも行って」と切り捨てられた青年

がいました。

30歳を前にしてです。その無念さたるや。泣きじゃくりながら訴えるその姿はとても痛々しかったです。

 

芹沢氏は、「待つ」から、本人に責任をもたせ、親は本人につき従う「見守る」に変えてみることを提案

しています。しかし、これは言葉ほどの違いはありません。

私は「見守り」は単なる見送り問題の先送りと言っています。

聞こえのいい、何もしない言い訳です。

親や支援者が一番手を抜いたやり方です。直視恐怖からの逃げの手立てです。

芹沢氏は、ある精神科医の話をあげ、本人との面接も治療もなく、親の見守る姿勢をサポートしただけ

という事例の対応法を、ひきこもりに対する基本的かつ正しい対応だと論じています。

この事例は、十年以上のひきこもりのケースですよ。

親の見守る姿勢をサポートって何でしょう? 何をしたのでしょうか。それとも何もしていないのでしょう

か。

芹沢氏の論調は、ひきこもりによって失われてしまうことがあることが見落とされています。当然長期

であればあるほどそれは大きな代償となります。

そしてまた、引きこもりの失敗と称して、自分が主張する「正しい引きこもり」ができなかったら、凶悪

犯罪者にもなってしまうといくつかの事件を引き合いに出し述べています。

一部のメディアや氏のような評論家たちが、ひきこもり=犯罪者予備軍といった誤ったイメージを社会

に与えていることに強い憤りを感じてしまいます。

 

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