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解決支援者の現場日記 : 旧ブログ 不登校 19ページ目
舵取り役の逆転
先日こういう質問を受けました。
「支援がうまくいかない場合はありますか?」
「どんな場合が結果を出せませんか?」
もちろんうまくいかない場合があります。
初期のころの苦い失敗体験もあります。
うまくいかないというか、時間がかかってしまうケースに多いのは、家庭の中で親と子の立場関係が
完全に逆転してしまっている場合です。
当協会の支援法では、当たり前の話ですが、ご両親に深く関わってもらいます。
当事者本人だけに現状改善を促しません。
当人も自分だけが問題視されては納得がいかないことでしょう。
ですから、ご両親に積極的に意識改革、行動改善に取り組んでもらい、これまでのわが家の歴史の
流れに変化をつけていただきます。
ですが、ここで本来舵取り役であるはずの親と子の立場が逆転してしまっていて、親が現状改善の
主導権を握れていない場合があるのです。
かといって、子どもの方が現状改善の主導権を握っているわけではありません。
子が握っているのは、現状維持の主導権です。
この背景にあるのは、長きに渡って子の意志(動きたくないという)を尊重し過ぎたために、意に反した
ことを今さら言い出せなくなっていることと、多少なりとも、これまで子どもの意志に寄り添えず、負担
を与えてしまって今の不登校やひきこもりがあるのだろうという自己反省から、これ以上負担をかけ
ることをためらい、わが子がいやがることを言えなくなってしまっていることです。
子どもからメモで指示された買い物をしてくる親。
部屋に食事を届ける親。
外出時の運転手代わりになっている親。
鍵のないドアを開けられないでいる親。
声をかけることもできなくなっている親。
などなど。
昼夜逆転して寝ている子どもをおこさないようにと、他の家族が息をひそめている家庭もありました。
仕事から疲れて帰ってきた家族の方が、足音にも気をつかっているのです。
これまでの生活パターンに変化をつけさせるためには、「めんどくさい」「おっくうだ」という事をあえて
させていかなければなりません。
負荷のかからないことをやらせても、何の意味もありません。
何らのはたらきかけもないまま、「相談所に行ってみる?」「家に来てもらう?」といきなり切り出す親
御さんもいます。
あたかも断わってもらうことを期待しているかのようです。
すんなり「うん、行ってみようか」というはずもありません。
これは、無意識の内に親御さん自身が、変化することをためらっているのです。
でも、それは認めがたいことですから、子どもがいやがっているということを行動に移せない口実に
してしまうのです。
人間心理の悲しさです。
不登校やひきこもりが長期化すると、いつのころからか当事者の生活スタイルを中心に家族の生活
がはこばれるようになっていきます。
こちら(支援者)から本人へのはたらきかけを指示しても、実行に移すまでに非常に時間がかかりま
す。ようやく実行できたかなと思うと、「本人がいやがっています」と頓挫します。
最後には、「本人のやる気が出るのを待ってみます」となります。
そしてまたここへ来て再び見守り(長期化)が始まるのです。
家庭運営の舵取り役は、あくまでも親です。
どうしたらいいか、どこへ行けばいいのかをわが子に尋ねる親もいます。
子ども自身分からないからもがいているのに。
現状改善、問題解決の主導権を握るためには、学ぶしかありません。
何が必要で、何を優先させるべきかを的確に判断できるようにならなければなりません。
学ぶことで理解でき、理解することで、わが子の痛みに寄り添うことができるのです。
ひきこもり無償支援活動〈たらちねサポート〉事業
https://www.interbrain.co.jp/topics/2009/01/post-3.php
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大野城市総合福祉センター 午前10時~正午 (要予約 0120-870-996)
詳細は https://www.interbrain.co.jp/counseling/
【熊本出張相談会】
4月22日 (要予約 0120-870-996)
熊本市青少年センター(熊本市新屋敷1-18-28)を使用させていただきます。
熊本市内近隣地域はご自宅までお伺いもできます。(交通費実費/熊本市役所からの距離による)
4月21日 (要予約 0120-870-996)
八代市厚生会館
4月22日 (要予約 0120-870-996)
和水町中央公民館
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NPO法人地球家族エコロジー協会
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(NPO法人 地球家族エコロジー協会) 2009年4月10日 18:50
行動無くして、変革なし!
講演会や相談会を開催した時に思うことは、「動く」いわゆる行動力です。
インターネットに代表される通信時代になって、本当に便利さを日々実感します。
ほとんどの買い物もお店に行かずに済んでしまいますし、航空券やチケットも手に入ります。
何かを調べる時にも図書館へ行くこともなく、パソコンの前でほとんど済んでしまいます。
しかし、そういう便利な時代だからこそ「足で動く」ということが大切だと思うのです。
相談を受けていて、時おり、電話やメールで「どういう施設ですか?」「お金はかかるのですか?」
「治りますか?」といった問合せがあります。
こんな場面もあります。
毎週月曜日は、大野城市総合福祉センターで無料相談窓口
https://www.interbrain.co.jp/counseling/
を行っていますが、時折、予約を入れていたのに何の連絡も無しに当日こられない方もおられます。
また、数度にわたる長時間の電話相談の後、「これ以上は無料の範囲を超えておられますので」と
言った途端憤慨なされる方、家族もカウンセリングを受ける必要があることをお話しすると、「親は
いいんです。家に来てもらって子供に会ってもらえば」と、掃除の代行業者に掃除を頼むと同じ感覚
で、ご自身は何もやりたがらない親御さんもいます。
原則こういうご依頼には対応しておりません。
私がいつも感じるのは「何故自分の目と耳で確認しないのだろうか」ということです。
「何故足を使って動かないのだろう。この姿勢が子育てにも反映しているのだろうなぁ」と思います。
相手の人となりは、自分の目で確認したいものです。噂や憶測ではなく、自分で直接顔を見て話して
みたいと思うのですが。
私は若い頃、何度か本の著者に会ってみたくて、アポも取らず会社に訪問した事がありました。
突然のことで先方は驚きますが、同時にわざわざ遠方から来てくれたということで、色々話を聞かせて
くれたこともありました。そこで本を読んだだけでは分からない、著者の人となりを自身の感覚でとらえ
ることができます。
ひきこもりも不登校も、解決にあたっては、ご家族の意識ひとつです。たとえ10年を超すひきこもり
でも、家庭内暴力があるひきもりでも、親が意識を変えることで解決に向います。
当協会の家族会(ゆにわの会https://www.interbrain.co.jp/yuniwa/)に参加されている親御さんたち
には、問われている親としてのあり方に対し、果敢に向き合おうとする勇気と潔さと、子を思い、生き方
そのものを見つめ直し、家族再生に向って歩んでいく逞しさを感じます。
わが子の問題を解決するためには、親御さんたちに足を使う労を惜しまないでほしいと強く思います。
マウスのワンクリックで解決できるほどの問題ではないのですから。
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(NPO法人 地球家族エコロジー協会) 2009年4月 4日 08:56
訪問支援が目指すもの
訪問支援(アウトリーチ)について述べてまいりました。
訪問支援がはたす役割、意味は何かを考えるためには、そもそもひきこもりの支援に必要なことは
何かが明確になっていなければなりません。
私が関連図書の紹介を乞われた時にお薦めしているものに『ひきこもりと家族トラウマ』があります。
著者は、多重人格研究の第一人者である服部雄一先生です。
この書の内容は、当協会がこれまで行ってきた指導理念を理論的に裏づけするような内容であり、
現場から入ってきた経歴の私としては、臨床家、研究家の立場の方からエールを送っていただいた
ような気がして、とても心強く感じた本です。
一部抜粋させて頂きますと、「ひきこもりを見る場合、日本人と外国人は目のつけどころが違います。
多くの日本人は「外に出ないこと」「働かないこと」だけを問題にして、専門家も含めて、トラウマ性の
症状-人間不信、対人恐怖、自殺願望、不眠、感情マヒ-に目を向けません。
こうした症状を無視すると、ひきこもりは働きもせずに部屋でテレビゲームばかりする怠け者に見え
てきます。
これに対して外国人は、ひきこもりが何年も人を避けて部屋に閉じこもったり、自殺願望をもったり、
人間不信や感情マヒの症状があることに注目します。」(109P)
私はかねてより、不登校・ひきこもりの“問題”は何か?ということを相談者の方に問いかけています。
つまり、学校に行っていないことや、ひきこもっている、その状態が最優先で解決すべき問題なのか
を、自問して頂いています。
「訪問支援活動(アウトリーチ)」https://www.interbrain.co.jp/blog/2009/03/post-88.phpでお話した
名古屋の支援施設のテレビ放映に関しても、この本の中でふれられており、海外専門家たちが絶句
していることや、「これは治療ではない。しかも親のためのものだ。本人のためのものではない」
(108P)といった言葉が記されています。
私がこの女性に強い憤りを感じたことは、やはり当たり前のことのようでした。
この名古屋のひきこもり支援施設「アイメンタルスクール」は入塾生を死亡させた事件を起こした施設
です。こういう事件があると、「いったい何をしたいのかな?親も含め、当事者たちをどうするつもりだろ
う?」と考えてしまいます。問題をどこに置きたいのだろうかと思ってしまいます。
『部屋(家)から出す。家族から離す。集団(社会)生活をさせる。暴力(自他への)を止めさせる。
働かせる。精神病院へ入れる。根性(子も親も)を叩き直す』こういったところが問題として扱わ
れているような印象を受けます。
確かに表面的な課題としては、これらも有りますが、要は何故こうなったか。
それには必ず“訳”があるということです。その“訳”を解消し、さらには、より良く生きていきたいという
意識が生まれれば、結果として上記のことがらは改善されているということです。
プロセスや手段を目的化してしまうと、本質的な解決から遠ざかります。
精神病理を原因にしたてたいといった動きも見られますが、確かに一部病理性がある事例もあります。
であっても、薬を飲ませること、入院させることが目的となっては同じことです。
本人に病気を受容させ、治療への積極性を促し、さらには症状、障害をかかえながらの生き方の充実
(QOL)を模索させていくことが大切だと思います。
そのためには、病人と認めてもらっただけでは解決にはなりません。
訪問支援の目的はなんでしょう。訪問することが目的となっては意味がありません。
いきなり訪問して、声をかけたからといって何の解決にもなりません。
もちろん、本人の了解もないまま強引にドアを開けることは、絶対にあってはならないことです。
私が訪問する場合は、最初の訪問は必ず日時を伝達します。外出ができる青年の場合は、留守を
される場合があります。それでいいんです。こちらが招かれざる客ですから、本人のテリトリーへの
訪問に対しては、最低限の礼儀をつくすべきです。そしてまた、本人の了解がない場合、絶対にドア
を開けないことを約束し、ドアノブにも手をかけません。これらを徹底することで、当事者は安心して
ドアの向こうにいるようになります。
訪問支援の目的は、私の場合、当事者に自身のひきこもりがわが家の問題だけではすまなくなって
しまったと認識させる意味があります。わが家の問題である内は、親も子もゆったりかまえてしまい
ます。
第三者が介入することで、社会を意識させることが出来るのです。
福岡市でも訪問支援事業が取り組まれているようですが、訪問に関して本人の強い拒否がないこと
が条件となっています。斎藤環氏が懸念していたように、支援法が確立されていない現時点では、
それが賢明でしょう。
しかし、本人の強い拒否がない状態であれば、逆に訪問支援の必要はないと思います。
つまり、訪問をせずとも本人が動き出せる可能性が高いということです。
そもそも、訪問支援がどーしても必要なケースというのは、むしろ本人が強く拒否するような場合と
も言えます。
結論として、訪問支援(アウトリーチ)は、必要に迫られて行うべきもので、安易に話し相手になるため
といったような形で下準備(ここが重要)もないまま行うことは避けるべきだと思っています。
訪問支援法の確立は、実は訪問支援をしなくてもいい方法の確立でもあるのです。
どうやって訪問すればいいかを考える前に、どうやったら訪問をしなくてもすむかを考えてもらい
たいものです。
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(NPO法人 地球家族エコロジー協会) 2009年3月27日 18:07
何のための訪問支援?
前回の訪問支援の記述に対して、支援団体の主宰者の方からコメントが入りました。
同伴支援ということを提示しておられます。詳しくはコメントをご覧下さい。
大変すばらしい取り組みだと思います。
私がかねて申しておりますように、ひきこもりは生き方の病です。
ですから、様ざまな生きざまに触れさせることはとても有意義なことなのです。
支援者としての私自身、何ものかを分析し、型にあてはめ、期待値に近づけるといったような支援法
をかねて取っておりません。
青年たちにアドバイスしている内容は、全て自分で人体実験(笑)して効果があった改善法だけを伝
えています。自分をより良く成長させられる生き方を提案しています。
ですから、こちらの期待値に近づけるというよりも、彼らがどう化けるか(笑)を楽しみにしているので
す。いろんな化け方があって、“らしさ”が出てくればいいんです。
ニート層に関して申しますと、なぜ彼らが健全な職業意識、就労意識が育っていないかというと、
社会の中で働くということに関して、手本となるような、憧れとなるような仕事人が周囲にいなかった、
仕事に対して、やりがいや生きがいをもって取り組んでいる大人がいなかったということがあげられ
ます。
残業で遅く疲れ果て、グチをこぼし、休日も接待ゴルフでいない会社員の父親に育てられ、「絶対に
会社員にだけはならない!」と言った青年もいました。
私が訪問支援をする場合というのは、どーしても自室や家から出られないとか、頑固に意地をはっ
ている(笑)場合だけです。 “どーしても”のみです。
しかし、この“どーしても”が当協会の場合は、前回にもお伝えしていますように、意外(?)に少ない
んです。
たとえ長期のひきこもりの場合でも、訪問まで至らずに、本人が動き出します。
もちろんそれは、やることをやればの話です。
では何をやるのかということですが、
それは家族の当事者本人への真の寄り添いです。
うわべだけのまやかしの寄り添いではなく、誠の真の寄り添いです。
それが何かは、是非〈たらちねサポート〉https://www.interbrain.co.jp/topics/ へ参加してみてくだ
さい。
前回ご紹介した調査結果で、ひきこもり経験者、その家族の相談スタッフの対応を期待している理由
として、「専門性や資格よりも、ひきこもりのことを理解し真剣に取り組んでくれる人を相談相手として
望んでいることを示している」とありました。
これについても私は、ひきこもり長期化の一因であると述べました。
その理由をお話ししましょう。
何でも経験者が一番の理解者であるというのは、うなづけると思います。
確かにそうです。
しかし、こと“ひきこもり支援者、問題解決者に経験したことだけで適正か?”となるとちょっと
違ってくるんです。
精神科医の斎藤環氏がやはり、「経験者が向いているとは限らない」といった見解をお持ちである
ことは、前々回https://www.interbrain.co.jp/blog/2009/03/post-88.php ご紹介しました。
私は、別の理由で同じ意見をもっています。
どういう理由かといいますと、
ひきこもりになる青少年たちは、あらゆる事象をとらえる時の選択肢が非常に限定され、偏っている
のです。自身の経験への意味づけに多様性がないのです。それは、親ごさんも同じです。
だからこそ、傷つき、そして、ひきこもるという行動しか選択できなかったのです。
こちらのブログhttp://forum-hokushin.weblogs.jp/blog/2009/03/post-2a61.htmlも参考にして
みてください。
ですから、ひきこもりを経験したからとか、わが子のひきこもりを経験したからとはいっても、必ずしも
相談者、支援者に適性とは言い難いのです。
不登校、ひきこもりの問題解決の際に大切なことは、一般的解答ではなく、あくまでも特定解を見い
だすということです。
特定解というのは、「この子にとっては」という視点から導きだされるものです。
一人一人資質も、家族背景も、成育歴も違います。
経験者であっても、それは「自分の場合はそうだった」に過ぎません。
「自分がそうだったから、他もそう」ではないのです。
よく、勉強熱心な親ごさんが、いろんな関連書を読み「結局どうすればいいか分からない」と判断に
困ったり、当事者が書いた本を読み「自分には参考にならない」という感想をもらす当事者たちは、
誰にでも当てはまるような一般解を期待するから分からなくなるんです。
特定解を導き出すというところになると、自身の経験だけでは追いつかない部分があるのです。
こういったところからも見えてくる問題は、「ひきこもり支援に何が必要か?」といったところが
不鮮明なまま、様ざまな論議がされたり、思いつき支援策が講じられていることです。
安易な訪問支援が及ぼす弊害はないのか、訪問せざるを得ない場合のその目的は?などにも関連
することですので、次回までこのテーマに言及しようと思います。
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(NPO法人 地球家族エコロジー協会) 2009年3月23日 19:10 | コメント(1)
必要なことは訪問支援か?
ある全国規模の家族会による調査資料を見ました。
来年度より始まる「ひきこもり地域支援センター(仮称)」に望む支援内容について、家族429名、
本人83名に調査した結果です。
家族が求める専門性と本人が求める専門性で、共に多いのが臨床心理士でした。
次いで、ひきこもりを経験した相談スタッフや当事者家族の相談スタッフでした。
私はこの調査内容を見て、「やはり、で、あったか」という感想をもちました。
どういうことかお話ししましょう。
このそれぞれの結果に対してこの会では、
臨床心理士への期待が高いのは、「心理的援助の専門性を求めている」
ひきこもり経験者、その家族の相談スタッフに対しては、「専門性や資格よりも、ひきこもりのことを
理解し真剣に取り組んでくれる人を相談相手として望んでいることを示している」と述べています。
「で、あったか」という私の領解は、ここにひきこもり長期化の一因がやはりあったという納得から
のものです。
今回と次回、二回にわたって論じたいと思います。
先ず心理的援助の専門性として臨床心理士をあげているところですが。
調査結果を見ても、医師や産業カウンセラーへの期待度に比べはるかに高い割合です。
この点の何が問題か?
臨床心理士は、対象者の病理性に対して治療的視点に立っています。
障害や目の前の問題を軽減させることを目的として、個人の援助を行います。
では、ひきこもりという状態(病名ではない)が必要とするものがそこにあるのか?
実は、ひきこもり状態の青年たちに必要なことは、発達的視点に立って、自立を目的とし、問題の
除去で終わらず、その後の自立のための意思決定過程を援助することなのです。
この辺りに関しては、当協会サイトhttps://www.interbrain.co.jp/psychoeducation/をご覧下さい。
個々人が自分の資質を最大限に生かし、自分の環境を利用して、よりよく適応・成長するのを援助
する。それは、各々の人生を建設的かつ創造的に生きていくために必要とする心理学的援助である
わけです。
また、ひきこもり問題は、当事者個人の問題ではなく、他者(主に家族)、環境との相互作用におけ
る問題ですので、個人の内的環境に焦点をあてた臨床心理の視点ではそぐわない部分が多いの
です。(『カウンセリング心理学』渡辺三枝子著参照)
これらのことは、不登校児童がスクールカウンセラー(主に臨床心理士)に相談したものの、ただ話を
聞いてくれるだけで、具体的な改善法は全くなかったとか、自分が話せない時の、沈黙の時間(カウン
セラーが黙っているから)に耐え切れず、相談室に行かなくなったということなどからも実感している
方もおられるでしょう。中には、カウンセラーに気をつかい、しゃべりたくないのに無理にしゃべってい
たという笑えない事例もありました。
ひきこもりの事例でも、4年間もの間社会的自立のために真面目に臨床心理士のカウンセリングに
通い、具体的自立策も与えられず、業を煮やし「30歳になってしまいますが、今のままで大丈夫なの
でしょうか?」と尋ねたら、「私じゃ手に負えないから精神科にでも行って!」と言われて、うなだれて
父親に伴われて当協会へ来た青年もいました。もちろん精神科にも行く必要の無い青年でしたが。
当協会の支援法では、ほとんどのケースが訪問支援を行わなくとも、親御さんに伴われて自ら出向
いてきます。それはご家族に共に動いてもらうからです。
たまたま本人が動けるケースが多かったということでしょうか?
それにしては、ひきこもり期間も長いですし、年齢も高いのですが。
もしそうだとしたら、前回から訪問支援活動(アウトリーチ)について述べていますが、そもそも訪問
する必要のない家庭に懸命に訪問しようとしているのではと疑念も出てまいります。
実際、当協会の事例でも、もし親御さんに動いて頂かず、本人を動かそうと思えば、訪問するしか
なかったでしょう。
これらのことから、訪問支援活動が必要なのか、そもそも、ひきこもり問題解決のためには何が
必要なのかを、改めて問い直すことの重要性を論じたいと思います。
もちろん、訪問支援活動が必要なケースもあるのは事実です。
ではその訪問支援活動に真に必要なことは何かも述べたいと思います。
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(NPO法人 地球家族エコロジー協会) 2009年3月21日 17:41 | コメント(1)
訪問支援活動(アウトリーチ)
15日の毎日新聞に「社会的ひきこもり」の著者斎藤環氏のコラムが掲載されていました。
「青少年育成施策大綱」に明記されている訪問支援活動(アウトリーチ)にふれ、支援法がまだ確立
されていない中で実施されることを懸念し、「くれぐれも慎重であってほしい」と述べられていました。
これまでにあった一部の民間支援団体の拉致監禁まがいの手法による死亡事件や傷害事件を例に
あげ、有効性以上に倫理性に配慮してほしいと述べられています。
倫理性とは、訪問対象者の人権や主体性、プライドを徹底して尊重するという姿勢であると。
随分以前に放映されたテレビ番組のひきこもり特番の内容から私の見解を述べてみましょう。
10代のひきこもりの息子の頭に、「いいかげん目を覚ませ!」とシャワーの水をかけている父親や、
無理やりひきずり足蹴にしている父親の姿が映し出されていました。
その光景を腕組みしてじっと見ている女性の支援者。時折、激しい(女性とはとても思えない)
口調(罵声)で、親を挑発し、子どもへ説教させ、自身も子どもをののしっていました。
説教が親にとっても、支援者にとっても一番簡単な方法。しかし一番徒労に終る方法です。
甘えだけでひきこもっている子どもの場合はいいでしょう。
大切な事は、「何が問題解決した状態か?」という事です。
部屋から出すことが解決であれば、まさに“引きずり出す”ことで解決になります。
でも、本質である親との問題や、対人関係の問題は解消されないどころか、さらに深まり、親子の絆は
より切れかかるでしょう。
番組の家族も、母親と妹は別居しており、父親と息子だけが生活していました。
別居の理由は、息子の暴力ということでしたが、母親が逃げたのは、暴力からではなく、我が子から
あびせられる、苦悩からの絶叫を聞くことが出来ない。つまり、現実からの逃避です。
恐らく息子は、母親に見捨てられたと、恨んでいるでしょう。
また、いきなり他人(女性支援者)を連れて来て、いきなり慣れない説教を始め、部屋から引きずり出
し、強制的に親元から引き離す。
これで父親にも恨みが増したことでしょう。「とうとう親父まで見捨てやがった」と。
特に私が憤りを禁じえなかったのは、カメラの前に子供をさらしたことです。
あの場には、カメラマン、音声、照明、ADと複数のスタッフの方がいたでしょうが、その前で一方的に
蹴られたり、水をかけられたり、罵声をあびせられる子供の気持ちをどう考えたのでしょうか。
「人権」の観念のないまま“ひきこもり問題”に対処すれば、子供たちにさらに傷を与えることになりま
す。
子供に向き合えない親のもとでひきこもりは長期化し、恐れず説教することを向き合う事と勘違いして
いる親のもとで、子供の傷はさらに深まり絆は断たれます。
向き合うということは、子供たちの「傷み」に向き合い、「ぬくもり」で癒すことだと、日頃の支援活動の
中で私は感じています。
斎藤氏は、訪問支援者の資質に言及しておられました。
経験者が向いているとも限らない。「人は自分が抜け出したばかりのあやまちに最も厳しい」(ゲーテ)
からだ。
他者への畏れと自らの行為に対する懐疑を常に忘れないこと。
これこそが、いかなる知識や資格にも増して重要な資質であろう。
私自身は、当事者が自己理解を深め、自己責任のもとでより良い意思決定ができるように援助し、
社会の中で自分らしく主体的に人生を歩んでいけるように忍耐強く後押しできる資質が必要だと
思っています。
自己の無力さを自覚した、慎み敬いの態度が重要だと思います。
「私が助けてあげよう」など思わないことです。
この訪問支援については、安易な目的、手法もまま見られるようですので、次回も少し取り上げたい
と思います。
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(NPO法人 地球家族エコロジー協会) 2009年3月16日 20:48
幼児化する社会
「これといってやりたい仕事がないので職種の選択に迷います」ともらす青年たちがけっこういます。
「自分の適性にあった職種に就かないと長続きしないから」と確かにもっともらしい理由ではあります
が、そもそも自分の適性が見えているのか、やりたい仕事に限らず、自分の欲求すら自覚できてい
ないことが少なくないのです。
「やりたいこと」は、じっと家にいても見つかりません。先ず三つの視点をもって考えてみましょう。
●やりたいこと●できること●やらなければならないことです。
やりたいことを出来るようになるためにも、やらなければならないことがあります。
夢や希望の実現のためです。
できないことを出来るようにようになるために、やらなければならないこともあります。
スキルアップのための取り組みです。
そして、やりたいことがまだ無い場合は、見つけるためにやらなければならないことがあります。
つまり、いずれの状態でも、先ずやらなければならないことが当然そこにあるということです。
ところが、この“やらなければならないこと”という視点が、すっぽり抜け落ちていることが多く見受け
られます。
あらゆる制約、不自由さから逃れようとしている青年たちが、行動をおこすはずもありません。
「自由な時代」彼らは、制約から逃れ、自由な自己実現、個性化を許され、ひたすら自由を叫ぶ。
しかし、逆に条件を設定されなければ自分一人で目的を見出すことも、方法を模索することも出来な
いことを認めたがらず、「やりたいことがないから」ともっともらしい言い訳を繰り返し、自分をごまか
す。
単なる時代背景とは、言いたくない。大人たちが作った社会だと一般化してしまえば、全ての大人が
一斉にその責任を回避する。
「この子を育てた親の私が」と、それぞれが私の、個の問題と受け止めれば、動かざるを得ないだろ
う。
「皆でやろう」なんて言うから、皆がしない。「私がする」と皆が言えば、社会は変えられると思います。
好き嫌いの快楽原則だけで動いているうちは子どもです。
必要性から動ける現実原則が身にそなわってこそ、大人に成るということです。
現代は社会全体が幼児化しているのかも知れません。
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(NPO法人 地球家族エコロジー協会) 2009年3月12日 19:43
不登校、ひきこもりの長期化に思う
先日40歳のひきこもりの相談を受けました。
スタートは、中二の不登校です。
それ以来高校にも進学せず、今に至るとのことでした。
近年は、長期化がかなり進行していることを感じます。
4月からスタートする〈たらちねサポート〉事業は、長期化をくいとめることを大きな目的としています。https://www.interbrain.co.jp/topics/2009/01/post-3.php
春日市教育委員会の後援と社会福祉協議会の協力を受け、無償の支援活動を展開していきます。
春日市の社会福祉センターで行われる毎月の定例会で、家族がどう関わることで当事者本人を
動かすことができるか、ひきこもりという現象の理解を深め、さらには、個別の家族相談から、それ
ぞれの状況を翻訳し原因を解析していきます。
定例会は、親(家族)の自助会の形態を取りますが、一般的な親の会とは全く違います。
一般の親の会は、単なる親同士の交流会にとどまっており、中には10年以上参加しているケース
もあります。これでは何のための集まりなのか分かりません。
以前にも「周りを見ても解決した家庭を見たことが一度もありません」と述べられた方がおられました。
この方も長く親の会に参加しておられ、事態が変わらず当協会に相談にこられた方です。
長期化の背景には、「問題」を間違ってしまっているということがあります。
間違った問題に対して正しい答を出そうとしていたという、極めて不効率なだけでなく、かえって事態
をこじれさせてしまうということをしてしまっているのです。
「問題」というものは解決された状態と現実との差であるわけですが、何をもって解決とみなすのか
という点で誤ってしまっている。
そして、「問題」というものは変化を必要とする状態であるにもかかわらず、その変化を拒むという
矛盾に気づかないでいることがさらなる長期化を招いているのです。
わが子を変えようとはしますが、自分自身がどこも何も変わっていないのです。
「親が変わらなきゃ」とよく聞きますが、何を変えればいいのかも分からないで言っていることが多い
ようです。
また、「わが子と向き合う」ということを、パートもやめて四六時中子どもといることだと勘違いしている
ことも少なくありません。
以前のブログで、「親子の共同作業」https://www.interbrain.co.jp/blog/2009/01/post-74.php
と題して述べたことがありますが、長期化には親自身が深くかかわっているのです。
今回のサポート事業は、当協会主催の「ゆにわの会」https://www.interbrain.co.jp/yuniwa/での
実績を踏まえ展開していくものです。
当事者が動けない状態であっても全く心配ありません。
「ゆにわの会」の参加家庭は、ほとんど当事者が社会参加への訓練を始めています。
親御さんたちが「問題」を見誤らず、変化を恐れず、適切な関わりを始めたからです。
ただ一つこの「たらちねサポート」事業で危惧していることは、長期化している家庭ほど親御さんが
高齢であり、インターネットを利用していないことが多いということです。
恐らくこのブログを目にすることもないでしょう。
もしあなたのお身内、お知りあいにひきこもり当事者があれば、是非お知らせしてあげてください。
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(NPO法人 地球家族エコロジー協会) 2009年3月 6日 17:41
地球家族エコロジーとは?
時折、協会の名称について尋ねられる時があります。
今回はこの法人名について少しお話ししましょう。
エコロジーとありますので環境団体のようですが、これは、“大いなる大自然に生かされている
ことへの感謝”を表わしています。
私たちは、すべて他からの恩恵を受けて生きています。だからこそ、“あたりまえの事をも与え
られた恵み”と感謝できる心性が必要です。
そして、生活するということは、その恩に報いていく行為です。よって、自己責任に基づいた報恩
としての行動が求められます。
また、家族エコロジーというのは、家族というものは、循環(円環)的な因果論により、家族それぞれが
影響しあっていることを表わしています。
つまり子どもの変容は、母親だけが原因とか、父親だけが原因とかではなく、循環と調和の絶妙な
バランスを維持している生態系(エコロジー)のように、連なりあう家族が互いに影響を及ぼしあっている
のです。
今や環境問題も一国の範囲の問題ではなく、地球規模へ拡大していっています。
世界の国の人々は、大地を共有しています。遠く離れた国に居ても、足を踏ん張っている大地でつな
がっています。まさに分析心理学のユングが提唱した集合的無意識のように人類を連なりあう存在と
しているのが、「地球」の大地です。
古来大和民族は、太陽をお天道さま、大地をうぶすな(産土)さまと大自然への畏敬の念をもって呼称
し、自戒の規範としておりました。
地球家族は、連なりあい、互いの自立性を保ちながら支えあい、活かしあって生きていく、大地(大自
然)に根ざした生き方、共生(Normalization)の家族を表現しています。
今回始まった〈たらちねサポート〉https://www.interbrain.co.jp/topics/2009/01/post-3.php は、
これまでの「ゆにわの会」https://www.interbrain.co.jp/yuniwa/ の実績を踏まえ、当事者が部屋
から出られないような状況からでも、両親のはたらきかけにより、動き出せる方法を公開するものです。
協会名に込められた理念の実際化として運営されるものです。
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(NPO法人 地球家族エコロジー協会) 2009年3月 2日 20:51
携帯依存症?
子ども達の携帯電話の利用が問題視されてきています。
文科省の調査の報告記事が掲載されていました。
http://www.asahi.com/national/update/0225/TKY200902250315.html
わが家にも小6の娘がいますが、携帯電話の所有率が、小6が25%、中2が46%、高2では96%に
及ぶということです。
娘にも持たせていますが、もっぱら防犯目的です。ピアノ教室に通っていますので、GPSで教室へ
着いているかが確認できます。ですから当然平日は持ち歩きませんし、休日親と離れて行動する時
のみ携帯させます。
記事の中で気になったのが、利用場面です。
「食事中」という答えは小6が12%、中2が25%、高2は22%
「入浴中」は小6で3%、中2で10%、高2では17%
ここまでくると、もう依存症といっていいでしょう。
食事中に使用することに対して、親はなぜ注意しないのでしょうか。
「時間帯が違い、一緒に食事をしていないから」と返ってきそうですが、食事の様子をうかがうことも
しないのでしょうか。
ただこれは、何も子どもたちだけではないような気がします。
通りを歩く大人の中にも、携帯を開いて歩いている人も少なくありませんし、運転しながら携帯をのぞ
きこんでいる人もいます。
喫茶店で同じテーブルに座っているのに、互いが会話もせず携帯に指を走らせている人たちもいま
す。
携帯が手元にないときっと落ち着かないのでしょう。
こういった依存症質は、虚無感、喪失感からきています。
心の空虚さから、何ものかに執着、依存してしまうのです。
ですから現代人は、子どもも大人も何らかの虚無感を抱えて生きているのでしょう。
このあたりは、ひきこもる青年たちと全く同じです。
彼らは、自己喪失の恐怖から人を遠ざけ、虚無感から生きていく希望を失っています。
携帯メールに依存する子どもたちは、顔も見たこともない相手をメル友と称し、人間関係を構築して
いる気になり、文字や絵文字といった字面相手に一喜一憂しています。
きっと家庭の中で、家族が互いの顔を見て会話をするという場面自体が少ないのではないでしょうか。
もしかすると、2階の子供部屋と1階で親子がメールで会話をしているのかも知れません。
明治天皇の『五箇条の御誓文』に「各其の志を遂げ、人心をして倦ままざらしめんことを要す」という
文言があります。
志、生きがいのある目標をもって自分らしく生きるということです。
心が暇になれば、人間ろくなことは考えません。
子どもたちの心になぜ虚無感があるのかを私たち、大人、親は考えなければなりません。
今、生きているという実感がありますか?
生きていくという自覚がありますか?
より良く、豊かに生きていくという意欲がありますか?
生きていることを楽しむ余裕がありますか?
生きる充実感を得たいですか?
それが無ければ、あなたはムサボリック・シンドローム、“隠れひきこもり”です。
自分の世界に閉じこもり、何ものかに依存、執着し、貪りつくします。
気づかないまま。
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