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解決支援者の現場日記 : 旧ブログ 2011年4月
ひきこもりの後遺症
「仕事に就けるためには、資格でもなければ」と、資格・技能の習得を促す傾向がありますが、注意
しておかなければならいことがあります。
ひとつは、「資格イコール仕事に就ける」ではないということ。
そして、もうひとつは、「資格イコール自信がもてる」ではないということです。
もちろん、『学校に通っておらず、働こうともせず、職業訓練も受けていない無業者』のニート
状態からは、一歩前進ではありますが、ここで申し上げることは、資格・技能がひきこもりから
脱する起爆剤には、必ずしもなるわけではないということです。
これまでも、自信がつけばという理由から、通信の大学を卒業した青年や、中には、国家資格を取得
した青年もいました。
しかし、「自信にはならなかった」という声も少なくないのです。
学歴に関して言えば、高学歴のひきこもり青年は普通にいます。
その青年たちは誰も、その学歴が「自信」の後ろ盾に成りえていません。
彼らが、コンプレックスを感じ、怯えを抱いていることは、他のところにあるからです。
中には、難易度の高い資格の受験生でいることなどで、自分がひきこもりであることを否認しようと
している青年もいます。
これは、親御さんも同じです。
「わが子は、ひきこもりなどではなく、受験生なんだ」と信じたいのです。
以前に、大学を卒業した後ある国家資格に挑戦し続け、30歳を過ぎ、自分が人と関われないことに
愕然とし、ひきこもりの相談会に参加し、その姿がテレビのニュースで放映され、それを偶然ご両親
が観て、親子三人で相談に来られた事例がありました。
親御さんも、テレビに映し出されたわが子の背中を観て、わが子がひきこもりであることを悟ったの
です。
親子で自覚、受容するのに、約10年を要したわけです。
ひきこもる青年たちには、社会的な所属がありません。
立場をもたないということです。
学生でもない。社会人でもない。病人(療養者)でもない。
無業者であるだけでなく、無所属派という状態です。
人間には、所属欲求というものがあります。
何かに所属(参加)することで安心感を得ようとします。
ひきこもる青年たちは、家庭ですら、所属しているという感覚が希薄になってしまっています。
「受け容れられていない」という思いが強いからです。
「戸籍から抜く」と言った父親や、また、親への反発心から自ら「戸籍を抜く」といった当事者もいます。
学籍を置くということは、その所属を得ることになります。
実質充分な修学がなされていなくても、立場を得られるのです。
その立場だけを得たくて、進学を希望する場合があるのです。
まさにモラトリアムです。
ひきこもる青年たちが抱えている怯えは、能力的なものよりも、もっと根源的なところから来ている
ものです。
存在の原初に関わるものです。
たとえ何かが出来る人間でも、結局は自分は誰からも認められない。
受け容れてもらえない人間
と信じ込んでいます。
それほどまでに自分を否定している青年が、履歴書に書ける程度の資格や免許を取ったからと
いって、それだけでは、社会へ入れる原動力にはなり得ないのです。
前回のこのブロクでも、震災の瓦礫に例えてお話しましたが、TVニュースでは、瓦礫の撤去に
100年はかかるだろうという報道もありました。
ひきこもりの期間が長ければ、長いほど、その後遺症とでもいうべき自己存在への不全感は、甚大
なものです。
家族にも数年間も顔を見せず、声も出さなかったことで、声を発することが怖ろしくてできないと
言った(筆談)青年もいます。
人が自尊心や自己信頼感といったものを失うと、自分が何者かということも分からなくなり、急激
に失速していきます。
それは、わが子が閉じこもり、無言の反旗をひるがえされ、全く力の及ばぬ状態になってしまった
親御さんが、親としての自尊心をなし崩しにされ、動きが取れなくなってしまっている光景からも、
歴然としていることです。
長期化の要因にもなっています。
青年たちの目線に立った、家族や支援者が多くなってこなければ、長期化は止まらぬでしょう。
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(NPO法人 地球家族エコロジー協会) 2011年4月23日 20:20
ひきこもりの終わりは?
東日本大震災の連日のニュースは、現実のことかと受け容れがたい惨状を映し出しています。
その中で、懸命に生きていこうとしている子どもたちの笑顔に救われる思いです。
巨大な津波は、一夜にして全てのものを飲み込み、根こそぎ人々から大切なものを奪っていきまし
た。
散在する瓦礫をすべて片付け終わるのにどれほどの時間がかかるのでしょうか。
瓦礫がなくなっても、それから元の状態にまで復興していくまでには、さらに膨大なエネルギーが
必要になってくると思います。
ひきこもりという現象も、このような災害と同じようなところがあります。
ひきこもりが災害というわけでは、もちろんありませんよ。
外出ができない、部屋から出ないといった状態から、自分の意志で外出できるような状態になって
くると、それだけで、ひきこもりがあたかも終わった(解決)と捉えてしまう傾向も強いようです。
もっと言うと、「外出などは普通に出来ていたので、ひきこもりとは思わなかった」と、十年近く社会
生活を送っていない状態を見過ごしてきた事例も複数例あるほどです。
「外へ出られるんだから、バイトでも始められるだろう」
「これまでの遅れを取り戻すためにも、一日も早く仕事に就いてほしい」
「本人がやる気にさえなれば、できるだろう」
こういった声が、親御さんからよく聞かれることなのですが、これは、無茶な話というものです。
津波が通り過ぎたら、それで終わりでしたか?
残されたのは、無残な瓦礫の山です。
余震も未だに続いています。(昨日7日23時30分にも宮城県沖でマグニチュード7.4の余震)
ひきこもりの長期化により、あらゆる問題(残骸)が山積しているのです。
外出ができるようになったとはいえ、それは波がおさまったにしか過ぎません。
現状改善のための支援団体に通うようになったといっても、余震(不安感)はまだ続いているのです。
いつ、ひきこもりに戻ってしまうか、予断を許さない状態です。
ですが、この辺りのことが当事者家族も分かっておられないことが多いようなのです。
当協会では、ほとんどのケースで、訪問支援を実行せずに当事者の青年たちが、自分の意志で
出向いて参ります。
もちろん、そのようにご家族と動機づけをしていった、その結果です。
そこまでに至るまでには、様ざまな葛藤、一進一退があります。
ご両親は、これまでの自分たちのわが子への関わり方に、正面から向き合うことが必要です。
自分たちの過ちの大きさに、愕然としてしまうこともあります。
気づかない間にわが子へ与えてしまったダメージに、自責の念に押しつぶされそうにもなります。
そこまでの懸命な取り組みをしてきたにも関わらず、いや、そうだからこそなのか、当事者本人が
動き出した途端、油断が出てまいります。
「やり遂げた。もう、親としての役割は終わった」
「あとは、自分で頑張りなさい」と。
親御さんの役割は、ここで終わりではないのです。
いざ、自分の意志で動きだしても、それからは瓦礫、残骸の撤去です。
ひきこもりの期間が長ければ長いほど、その量もかなりのものです。
瓦礫、残骸は、復興の障害となってしまっているものです。
瓦礫、残骸の撤去は、トラウマのケアです。
特に、社会不適応を招いてしまった、自己認識の歪みを肯定的に修正する必要があります。
その上で、社会適応のためのスキルの修得、向上を行い、自分の人生の取り戻しが必要です。
ひきこもりの期間が長ければ長いほど、年齢を重ねているということと、履歴の空白、失われた能力
など、甚大な障害要因もあります。
これらのことは、家族がみんなでやっていくことです。
瓦礫の撤去を一人にさせますか?
仕事ができるようになったからといっても、周囲との協調ができず、長続きせず、転職を繰り返したり、
こらえ性が無く、常に人間関係のトラブルを抱えているようでは、解決したことにはならないのです。
人を愛すことができ、人間関係を保ちながら働くことができ、社会的な自立が成しえてこそ、復興
(ひきこもりの克服)できたと言えるのではないでしょうか。
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(NPO法人 地球家族エコロジー協会) 2011年4月 8日 07:18
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