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解決支援者の現場日記

< ひきこもり・不登校~ある研究者の報告に対して④  |  一覧へ戻る  |  ひきこもり・不登校~自尊心の欠如が招くもの① >

ひきこもり・不登校~家族会に求められるもの


研究者が述べる「家族会」参加による親の変化の効用についての私なりの疑問を述べてきました。

それらの変化がかえって長期化を招いているということ。

であれば、何のために「家族会」に参加しているか分かりません。




では家族会は、無用なのでしょうか?

そうであれば、私自身が家族会を運営するはずもありませんね。

無用どころか、解決のためには絶対に必要なのです。

なぜなら、引きこもり現象の当事者は、親自身でもあるからです。

家族会というのは、「引きこもるわが子をもち、困ってしまっている親たちの集まり」であっては

ならないのです。「引きこもり現象を起こしている当事者の集まり」なのです。

ですから、家族会が必要なのは自明の理であり、どのような内容の家族会を運営していくか、

その中身が重要なのです。




この研究者の調査の結論として出されている提案では、親が自分自身の人生を振り返り自分の未来を

考える時間にする
とあります。

強迫的に子どものことだけを考え続けているので、もっと親に自己に対する気づきを促す課題

提供するということです。

これはそうではあるのですが、具体的な例としてあげられていたのが、「自分のためだけにお金を

使うとしたら」というような課題でした。

つまり、親がもっと自分に向くことで、子どもとの固着した関係性(共依存)に距離を取ることが

できるという発想です。

距離を取ることはもとより必要なのですが、自分の好み(楽しみ事など)に気を向かせることが、

自己に対する気づきを得られる方法ではありませんし、何よりも、損なわれている親としての自尊心

を取り戻す手立てにはなりません。

砕け散った親である自尊心が、回復されない限り、過剰な世話焼き(イネーブリング)は続きます。

親自身のことに多く関心が向けられていたために、その分子どもに関心が向けられていなかったこと

が、引きこもりの要因になっていた事例は、多いくらいです。




ですから、自尊心を回復するため、そして、わが子を成長させるために親としての発達課題

具えていく。

つまり親として成長していくための学習と訓練の場が、家族会には求められるのです。

研究者によるこういった調査報告は、アンケートの回答に基づくものが少なくありません。

アンケートでは拾えない、事態が起こっているその場(家庭)の“うめき”を直接反映させた

場作りが、急がれるのです。








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ひきこもり・不登校~自尊心の欠如が招くもの①


引きこもりや不登校の解決は、長期戦になりがちです。

したがって、その間の親のモチベーションを維持することが課題のひとつです。

ですが、ここで問題になるのが、親たちの自尊心がすでに打ち砕かれてしまっていて、そのことが

共依存イネーブリング(過度な世話やき)を招き、あきらめや深刻な長期化を促進して

しまっているということです。




自尊心とは何でしょう。

自身の存在意義(価値)に確信をもって、自分自身を自分自身として、そのまま受け入れられ、自愛

をもって自分を大切にできる心でしょう。それは尊大さとは違います。

親にとって、わが子から背を向けられ、何らの促しも聞き入れられない状態があれば、それこそ、

親としての存在価値を否定された思いになるものです。

となれば、引きこもりの解決のために根気強くわが子にはたらきかけていくことは、困難なことです。

(続く)








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ひきこもり・不登校~ある研究者の報告に対して④


次に記されているのが「コントロール的態度」

子どもへの過剰な世話焼きです。

子どもから頼られているという安心感を得たいがために、親としての役割(世話焼き)にしがみつく

ことで、子どもを支配、コントロールする態度です。

これが、遠くから見守る。子どもの成長を時間的に追うことができるように変化していく。

と言うのです。




遠くからの見守りは、問題の見送り、先送りにしかなりません。

また、“遠くから”は、〈対岸の火事〉他人事とほぼ同義になってしまいかねません。

「子どもの成長を時間的に追う」においては、もうあきれ返るとしか言えません。

「時間的に追う」と述べていますが、時間の経過だけで、本人が心の成熟を果たしていくと考える

のは、肉体的な発達、成長と混同してしまっています。

引きこもりの最大のリスクは、人と関わらないということです。

人間が、違う価値観をもった他者と関わらない生き方をしてしまうと、自分を客観視することも

出来ず、自己の世界観に囚われたままの状態で、そこから一歩も抜け出せず、ましてや心の成長

などあり得ないのです。




家族会(自助グループ)に参加することで、これまで述べたような変化が起こり、有効であるとこの

研究者は論じておられますが、このような変化では解決どころか、長期化深刻化をより招いて

しまいます。

変化したということで家族会が有効と思われたのでしょうが、重要なのは、それらの変化が解決に

果たしてつながっているのかです。

現実、一般的な家族会参加者からの解決につながった話は、ほとんど聞かれません。

20年近くも親だけが通ってるというケースもあります。

なぜ、家族会参加家庭でも長期化が進行しているのかを研究者に説明してもらいたいものです。

(続く)








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ひきこもり・不登校~ある研究者の報告に対して③


次に記されているのが「現状否定的態度」

自分の子育てを完全否定し、自罰的発言を繰り返す、あるいは子どもの態度に対する非難。

これが、家族会参加によって、このまま引きこもりでも構わないという、現状を肯定する態度に

変化するというのです。

「否定は良くないから肯定しましょう」これでは、前回述べた「二者択一」と何ら変わりません。

改善(より良い状態への変化)にはなっていません。




現状を受容することは最も重要なことですが、ありのままを受け入れるというのは、そのままの状態

を容認するということではない
のです。

現状、経験を受け入れるということは、それに納得することではなく、その経験を通して自分に

とって必要なことを学ぶということです。

ひきこもり現象の意味、わが子が抱えてきた苦悩が理解できれば、非難する理由がなくなります。

ですから、その理解のための学びこそが家族会では必要なのです。

「このまま引きこもりでも構わない」となれば、長期化してしまうことは当然の帰結です。




「否定は良くないから肯定しましょう」といった単純なことではなく、「何のためにそれを行う

のか」
といった目的を常に明確にして忘れないでおくことが重要なのです。

目的はあくまでも社会的自立です。

過度な罪悪感で自分を責めても何の意味もありません。

「親として何も言える資格がありません」となって、一切何もしなくなるだけです。

だからと言って、「私は悪くない」と開き直るのではありません。

いいの悪いのではなく、親としての責任があるのですから、そのはたらきかけが社会的自立という

目的を果たすためのものになっているかで、常に判断していかなければなりません。

責任をもつのも、あくまでも自身の責任の範囲です。

子ども自身の責任は本人にもたせていくべきです。

責任の肩代わりをこれ以上続けても自立の妨げになるだけです。

(続く)








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ひきこもり・不登校~ある研究者の報告に対して②


親に見られる共依存的態度のひとつにある「二者択一的態度」

親の子どもに関する選択肢が少なく、外に出て就労するか否か、登校するか否かばかりを考えている。

これは、「やるか、やらないか」0か100かの思考法で、親子共通の特徴でもあります。




これが、家族会への参加によって、選択肢が広がり、無理して苦しむより、家にいてくれる方が

安心していられる」
に変わる。

つまり、思うようにならず嘆くより、「家にいることもアリ」とする考えをもってみるということ

でしょう。




これは、安易に「とっとと、出て行けっ!」と追い出したところで、実際、親としては生きた心地は

しません。ですから、家に居てくれた方が確かに安心ではあります。

しかしです。

「無理して苦しむより」と、ここが問題です。

改善への働きかけの苦労を回避するために気持ちの置き所を変えてみるというのでは、それこそ安心

している間に、長期化が進みます。

これでは、改善とは言えません。




「愚者の慈悲」と表現されるものがあります。

葛藤を避けようとして、断わるべきものも断れず、上辺だけ親切にふるまうことです。

葛藤を避けるのではなく、目の前の現実に向き合い超えていく勇気を家族会では養うべきなのです。

無理は道理に叶わぬことをしているからです。

どうしてわが子が動けぬのかを道理に照らしてしっかり考え、はたらきかけの仕方を創意工夫して

いくんです。

葛藤から知恵が生まれるのですから。








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ひきこもり・不登校~ある研究者の報告に対して①


ある学会誌の中で、研究者による引きこもり家族会の調査報告が掲載されていました。

実は、ここで対象になっている家族会は、私もよく知っている会であり、私自身も、長年独自の

家族会を運営してきていることもあり、その調査結果に興味深く目を通してみました。

調査期間は、4年間に渡るものです。




この中で、家族会の有効性が示されているものの、その効果(?)に疑問をいだく部分が有りました。

引きこもり家庭の共依存関係」という親子の抜き差しならぬ関係が5つのポイントでまとめられ

ており、家族会への参加によって、それぞれの傾向が改善されていることが示されています。




家族会は必要なものではあるのですが、その運用の仕方を間違えると、かえって長期化を招いて

しまう有害性が生じてしまいます。

多くの家族会が残念ながらその傾向が見受けられます。

重要なことだけに、コラムの方でも家族会にふれておりますので、是非こちらもご覧になって

頂ければ幸いです。

これからこの調査論文の気になる点を一つずつ述べてみましょう。








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