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解決支援者の現場日記

< ひきこもり・不登校~生き辛さの正体③  |  一覧へ戻る  |  ひきこもり・不登校~人格形成の基盤作り① >

ひきこもり・不登校~生き辛さの正体④


〈問題への対処〉についてです。

人生、そして生きていくことは、問題解決の連続です。

ひとつひとつを丁寧にクリアしていく必要があります。

生き辛さというのは、これらの問題に適切な対処ができないでいるということです。




「問題」というのは、そのままにはしておけないことですが、そのままにしてしまう傾向

強いのです。

問題から意識を逸らし、問題を先送りにしてしまいます。

また、行動が反応的になっていますので、条件反射のように、考えて判断するということが

出来ていません。同じ行動パターンを繰り返します。

特に、ストレスを自分に向けられた攻撃と取ってしまうところがありますので、そこから退散

するといった行動を取ってしまいがちです。




自力で解決できない状況にあっても、自身の見識に拘り、他者に助けを求めることをしません。

相談もしないのは、自己否定感が強いということも関係しています。

「自分なんかが相談しても、まともにとりあってくれないだろう」と思ってしまうのです。

弱みを握られて、さらに不利益を被りかねないと思うのです。

自己不信が強い分、他者を信頼できないのです。




問題解決のためには、新たなことに取り組んでいく必要があります。

ですが、「失敗したらどうしよう」と心配、もっと言うと恐怖があります。

あれこれ考えだすと、思い煩って不安になってしまいますので、やがて思考停止状態となって

いくのです。

結果、問題をそのままにしてしまい事態をさらに悪化、深刻化させてしまうのです。









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ひきこもり・不登校~人格形成の基盤作り①


生き辛さがどこからくるかを述べてみましょう。

不登校や引きこもりが、まだまだ病気や障がいのように捉えられているようですが、現象として

起こっていることだと先ず捉えてください。

心が不健康な状態であるのは間違いありませんが、だからといっていきなり精神疾患、障がい

ではないのですから。




人格形成がどのように行われるかを簡単に述べてみますと、

5歳くらいまでが、愛着形成基本的信頼感が具わる時期になります。

「愛着」とは、心の絆ですね。

笑顔、スキンシップ、愛のある言葉かけが大切です。

温もりで包んであげる必要があります。




「基本的信頼感」は、生きる姿勢の基礎になるものです。

自分は愛されているか、周囲は信頼できるかといった自己信頼他者信頼の基礎ができるわけです。

周囲からの関わられ方によって、自己肯定的になるか否定的になるか、また他者を肯定できるか

否定するか
の傾向が具わります。




それから10歳くらいまでには、自己認識が形成されていきます。

自己評価他者評価によってその内容が変わってきます。

特に愛着対象からあるがままを受容してもらえることで、自身を価値ある存在と認識できるのです。

健全なアイデンティティの構築が成されるか否かに関わってきますので、重要な時期です。

これらが、自分は何者であるかを決定し、生き方の起点、前提となっていくのです。

(続く)








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ひきこもり・不登校~生き辛さの正体③


〈情動コントロール〉というのは、気分の自己調整です。

人は気分で動きます。

上機嫌であれば、積極的にもなりすし、不機嫌であれば不活発になりますね。

時折、不機嫌で活発になる時もありますが、その場合は大抵暴力や破壊行為になりますね(笑)。

ですから、気分、感情を自分でコントロールできることは大事なことなのです。




苛ついたときには、なだめる。

落ち込んだときには立て直す。

苛ついたり、落ち込んだりの時間が短くなっていくようにしていく必要があります。

三日も四日も落ち込んでいては、生活に支障が出てきます。

ひきこもりは、それが数年も続いているわけですからね。




また、ストレス(負荷)や欲求不満に対しての耐性が、とても脆弱です。

人の視線が怖くてカーテンを開けられない、外出できない、なんて聞くと「えっ?それくらいの

ことで?」と思いますね。

電車やバスにも乗れないというケースも少なくありません。

もちろん、乗り方を知らないわけではありませんよ。大人ですから。




物事の判断が、好き嫌い、快・不快でしか判断しませんので、めんどくさいと感じればしませんし、

嫌なことはそれが自分にとって大事なことでもしません。

つまり、必要性による判断ができないのです。

「実行機能」というものがありますが、それは自分の考えをもって長い目で見て、自分に有利に

なるよう選択をする
こと、今現在の楽しみを追い求めるのではなく、より良い将来のために行動

する
こと、計画し努力することを言います。

これができなくなっています。




それから、慢心自己卑下も特徴的です。

「うちの子プライドが高いんです」と言う親御さんも多いですが、それはブライトではなく、

自己防衛のための鎧です。

強がりから利己的になり慢心が強くなっているのです。

本当のプライドは、誇りからきていますので、心にゆとりがあって寛容です。

すぐにキレたり偉ぶりません(笑)。

何より、人の評価に怯えません。




逆に、

「自分なんかダメ人間」

「世の中で通用しない」

「誰からも嫌われる」

というような自己卑下も卑下慢といって、実は慢心なのです。

自分ことを「ダメ人間」と決めつけているその横着な奴は誰だってことですね。

それが自分の慢心です。

慢心から虚勢を張ったり、自分を見下したりしていれば、そりゃあ人を遠ざける結果となります。








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ひきこもり・不登校~生き辛さの正体②


〈対人関係〉の生き辛さは、親密な関係を結べないということです。

社交辞令的な表面的な関わりはできたにせよ、親しくなっていくということができないわけです。

以前、職場で親しくなる度に辞表を出していた青年が相談に来たことがありました。

職場に慣れ、より親しくなりかかると不安感が強まり辞職願いを出してしまうことを繰り返して

しまうのです。




「うちの子どもは、外出も出来てコンビニ等にも買い物に行けるので人間関係の問題は無いと

思うのですが」と言う親御さんもおられますが、店員とは何の関係も結ぶ必要がありません。

商品を出すだけで無言でも済みます。

親しくなりかかると怖くなるのは、「見知られ不安」があるからです。

見知られてしまうのが怖いのです。

自分がもぬけの殻ということを覚られてしまう不安に襲われるのです。

「さとられ不安」とも言います。




ですから自己開示ができません。

当然、適切な自己主張が出来ませんので、自己の要求を実現できないことがほとんどです。

「人生ままならぬ」状態です。




孤独にはなりたくないものの、親しくなったらなったで、いつか見捨てられることを怖れます。

そうすると、絶えざる承認を求めるようになり、NOが言えず主体性を欠き、依存的な生き方

なるわけです。

結果コミュニケーション不全状態で、人間関係が円滑にはならないのです。

(続く)








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ひきこもり・不登校~生き辛さの正体①


「生き辛さ」というワードをよく目にするようになりました。

不登校や引きこもりも、学校生活や社会生活に何らかの生き辛さを感じているからこそ、そう

なっているのですから、単に「学校に行かないのはダメだよ」「働かないのはけしからん」では、

真の問題を見逃していますし、何の解決にもなりません。




「生き辛さ」は、云わば“不適応感”です。

学校生活や社会生活の中での不適応感を感じているわけです。

もちろん、過剰適応状態も不適応です。

それを解決、解消していかない限り、不登校も引きこもりも終わらないのです。




では、その生き辛さ(不適応感)の中身ですが、

主に三つあります。

〈対人関係〉〈情動コントロール〉〈問題への対処〉です。

(続く)








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ひきこもり・不登校~現象が教えてくれること


新年明けましておめでとうございます。

昨年は、還暦を迎えこれまでを振り返る機会が多くありました。

不登校・ひきこもり支援を始めてからもう27年ほどになります。

時々、「なぜ支援を始められたのですか?」と尋ねられることももちろんありましたが、自分自身も

ふと思い返してみることがありました。




よく自身が体験者であったり、わが子が当事者であったりという方が支援の立場になっておられる

ことがあるようですが、私の場合はいずれでもありません。

また、教員や医療、福祉の現場からこられた方もよくありますが、それでもありません。

ですが、それがかえって良かったように思えます。

どんなことでも、門外漢の視点からの発想の方が、かえって表面的なことに惑わされず、本質を

押さえられるということがあります。

斬新なヒット商品もあらかたそんなところから生み出されます。

なぜなら、全く違う視点からそのことを観ているからです。




「専門」というのは手慣れている分、とかくバイアス(先入観、思い込み、偏り)がかかってしまい

やすいものです。

私が元教員でしたら、不登校は先ず学校、学業優先といった支援になっていたでしょう。

医療・福祉からでしたら、どうしても「病理」という目で見ていたことでしょう。

ですが私は、人は正常に悩み、怯え、憤るものだと考えていました。

もっと言うと、正常でありながらも狂気さえはらむ生き物です。

人間は戦争を起こします。

私欲のためだけに人も殺めます。

皆病人ですか?

学校に行かないだけで、引きこもっているだけで病気ですか?




長期化を招いている最大の要因は、世間体を気にしたあまりの初期の対応の手抜かりです。

つまり、偏見差別といった心の歪みが本質にあります。

不登校・ひきこもりが病理であれば、社会生活を送る多くの人達もまた、しっかり病人ですね。

「やる気が出る薬を精神科でもらえる」といったとんでも話を本気で言っていた親御さんも

おられました。

そんな薬が本当にあれば、不登校やひきこもりも、ましてや先進国の中でもトップレベルなほど

の自殺が改善されないままでいるわけはないでしょう。




病気のせい、社会のせい、先祖の祟り、罰当たり、憑きもの、名前が悪い、生まれが悪い、

親が悪い、子が悪いと思っている方たちに噛みしめてもらいたい言葉があります。




「病は薬で治すものではなく、病が私たちのあり方、生き方を治す薬なのだ」
アーノルド・ミンデル博士(プロセス指向心理学創始者)




わが子の不登校、ひきこもりこそが、自身の親として、人としてのあり方、生き方をより良く

改善していく機会を与えてくれているのです。

そのことに気づけた家庭だけが、不登校、ひきこもりに終止符を打つことが出来ているのです。








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