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HOME > 解決支援者の現場日記 > アーカイブ > 時事問題: 2020年12月

解決支援者の現場日記 時事問題: 2020年12月

ひきこもり(不登校)~報道のリスク⑥


最後に挙げるのが、社会問題へのすり替えです。

非正規雇用の恒常化、派遣切り等の雇用不安、世間体・偏見・差別といったことが、

ひきこもり現象の背景にあるから、一家庭の問題にせず、社会全体で対応していくべきだ

といった論調です。

これはその通りではもちろんあるのですが、なにも問題の背景に社会の様々な歪みが関連

していることは、ひきこもりに限りません。

学校のいじめ問題などもそうです。




ですが、その社会をつくっているのは、一人一人の人間です。

一人一人が、自分がどう生きていくかに責任をもっていくかが重要ではないでしょうか。

体のいい社会への責任転嫁にならないようにしなければなりません。

「みんなでやっていきましょう!」なんて言ってるうちは、誰も動き始めません。

それぞれが「私がやっていきます」と言い出さないかぎり、社会は変わらないでしょう。

ひきこもり、不登校は、毎日継続して続いているものです。

社会変革を待っている間に、あっという間に「8050問題」です。




家庭も小社会なのですから、子どもに安心を与えられない家庭、親の価値観によるわが子への

偏見・差別が生じないように努めていけば、いじめ問題もひきこもりも無くなっていくでしょう。

家庭、家族の意識変革こそ急がれるのです。

昔から『修身斉家治国平天下』と言って、世の中の安寧を創り出す指針が示されています。

天下を治めるには、まず自分の行いを正しくし、次に家庭をととのえ、次に国家を治め、

そして天下を平和にすべきである。







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ひきこもり(不登校)~報道のリスク⑤


ひきこもり者の自堕落な生活は、セルフ・ネグレクト(育自放棄)と言えます。

これは、こういった生き方が自分には相応しいという自己認識になっていることや、家族に

「期待できない子どもですから、もう期待しないでください」というメッセージでもあります。

それまでに、懸命に周囲の期待に応えてきて力尽きたという経緯があります。

 



ひきこもる行為は、自己治療でもあります。
 
ひきこもる以前からの生きにくさがあり、他の選択肢を持ちあわせなかったことで唯一の方法

ということでひきこもったのです。

そうなるにはそうなるしっかりした原因・理由が必ずあるのです。

 
ですから、精神疾患、障がい・発達障がい等の症状としてのひきこもりと、社会的ひきこもりでは、

問題点がまったく違います。

同列に並べ報道するものではありません。
 
ましてや、ひきこもり者による様々な事件は、「ひきこもり」がさせているわけではなく、周囲に

理解者がおらず、追いつめられたことにより生じたものです。




人は病気でなくても、偏見、差別もあるし、自他を害したり、「魔がさす」といったような行動も取る

生き物であることを忘れてはいないでしょうか?

(続く)






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ひきこもり(不登校)~報道のリスク④

 
次にあげる問題点は、ひきこもる行動だけを問題視している点です。
 
あたかも勝手に一人でひきこもってしまっているといった表現が見受けられます。
 
どんなことでも、ある状況が成り立つのは、環境条件といったものがそろっているからです。
 
ひきこもりという現象も、ひきこもれる環境やそれが継続する条件がそろっているからこそ
 
生じています。
 
それは決して本人一人ではそろえられないのです。
 



ひきこもり現象は、機能不全多問題家族に現れる現象です。
 
家族の機能というのは、「生み、育てる」です。
 
機能不全というのは、その機能に不具合が生じている状態を指します。
 
とは言っても、特別な家庭というわけでもありません。
 
全く健康に問題が無い人がそういないのと同じように、現代家庭は全般的に何らかの機能不全を

起こしています。
 
不登校の場合、親が教職員であるケースも少なくありませんし、学校側のいじめや心理的虐待

といった問題から生じている場合もあるのですから。
 



ひきこもりにしろ不登校にしろ、背景にある種々の問題が重層的に絡みあって生じています。
 
例えば、わが子の一大事に両親の意思統一、協力体制がはかれないというのもそのひとつです。
 
また、ひきこもりの定義に「家族以外の~」とありますが、他人のみならず家族間の

コミュニケーションも不全状態です。
 
特に父親の場合、本人と数年も会話をしていないというのもめずらしくありません。
 
くの問題があり、わが子のひきこもり(不登校)解決に集中できないような状況にある

という意味での多(他)問題家族です。




ですから、ひきこもる行動だけを問題視するような報道では誤った認識をもたせ、前回も述べた

ような〈引き出し屋〉のような悪質業者の横行までをももたらすのです。

(続く)






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ひきこもり(不登校)~報道のリスク③

 
本人が自ら動き出すタイミングを待つしかないといった印象を与えかねない報道も多いようです。
 
本人は「動かない・動けない」が大前提です。
 
「言っても聞かないから」は、長期化の原因としてよく聞かれることですが、これは何の言い訳

にもなりません。
 
あたりまえだからです。
 
だから支援が必要なのです。
 
このあたりに関しては「適切な援助とは?④」で述べています。
 



親の最も重要な役割は、〈動機づけ〉です。
 
本人のやる気を待つのではなく、現状を改善していこうという動機づけをしていくのです。
 
ただ「できることから始めよう」や、まして説教では動機づけになりません。
 
現象の理解・共感・痛みへの寄り添いによる信頼回復が先ず必要なのです。
 
理解してもらえていて、決して否定されていないという安心感があってこそ、前へ向かって

進んでいく勇気がもてるのです。
 



自分が動く(変わる)ことを怠り、現実否認思考停止責任回避の親が〔引き出し屋(悪質業者)〕
 
による被害といったものを招くのです。
 
拉致・監禁で、わが子の自立心が芽生えると思ってしまう未熟な判断力が、悪質な詐欺も

見抜けないのです。
 
ひきこもり(不登校)現象を、単に〈やる気〉の問題と受け止めていることがこういった
 
対応を誘因してしまいます。
 
やる気を出すのをひたすら待つか、なければ強引に引き出すか。
 
あまりにも短絡的です。
 



「なんとかなれば」とは思っていても、なんとも出来ないでいてもがいているということを
 
認識しておくべきです。
 
立ちはだかる不安恐怖怯えがどこから来ているのかを理解ししていくことで
 
動機づけが可能になっていくのです。






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ひきこもり(不登校)~報道のリスク②

 
報道により一番印象付けられることとしては、「ひきこもるわが子に苦しめられる親」
 
でしょうか。
 
あたかも親は何か被害でも受けているといった印象が強調されることが多いようです。
 
親の被害者意識は、本人のみを問題視することになりかねません。
 



ひきこもる原因、特に長期化には実は親が深く関わっています。
 
原因に関しては、子どもの発達過程の心理社会的危機に、適切な危機介入ができていなかったのです。
 
成長の過程で、子どもは様々なことに迷い、悩み、自分でいることに自信を失うような
 
場面が出てきます。
 
そういった危機的状況にわが子があることに気づき、適切な関わり(支え)が出来ていなかった
 
ことが背景にあります。
 



また、不認証環境と言って、子どもが親から見て正当に位置づけられていない状況にあった

場合も少なくありません。
 
具体的に申しますと、親による立場の乱用です。
 
つまり、親子という関係性の中で、子どもの立場、意思の尊重が足りず、常に指示的、
 
支配的な関わり方があったことで、子どもは混乱し、結果ご乱心状態になってしまったのです。
 



長期化は、ほぼ親の問題です。
 
「わが子は動けない」ということを大前提として対策を打っていかない限り、長期化するのは
 
必然です。
 
長期化は、一日目から突然数年間のひきこもりになるわけではありません。
 
昨日と同じひきこもり生活を今日も繰り返した結果です。
 
その繰り返しの間、動けないわが子に対してどういうはたらきかけを続けてきたでしょうか?
 
例えるならば、TVなどでありますが、自力で立てないほどの体重になり、働けないばかりか

命の危険もあると救済を求める番組がありますね。
 
体重は、いきなり200キロを超えるようなことはありません。
 
親も子も体重の増加に気づけていながら、その経過を見送った結果です。
 
ひきこもりの長期化も同じなのです。
 



ですから、誰が困らされているではなく、当事者家庭の「家族」という関係性への援助、
 
救済こそ支援としてはかっていかなければならないことなのです。
 
もがいているのは親だけではありません。
 
ひきこもり者こそ、親、家族からの救済を強く求めていることに気づいて頂きたい。

(続く)






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ひきこもり(不登校)~報道のリスク①

 
内閣府の調査で、40歳以上のひきこもりの数が61万人と、若者のそれを大きく上回る結果が

出されてからというもの、「8050問題」が盛んに報道されています。
 
つい最近でも、NHKドラマ「こもりびと」が放映され、ひきこもっているまま、両親が他界
 
したストーリーが描かれていました。
 



ひきこもり者による犯罪事件を扱った報道の際もありましたが、メディアの切り取り方で、
 
誤った認識を一般にもたせてしまうことが少なくありません。
 
私もこれまで、TV、新聞などの取材を受けたことがありますが、最初からひとつのイメージ
 
があって、それを誇張するような画、内容を欲しがるという傾向がメディアにはあります。
 
「何のために報道し、どうしていきたいのですか?」という質問に対し、答えに窮するような、
 
記者もいて、取材をお断りしたこともありました。
 



こういった報道により誤った認識をもたせてしまうリスクについて述べてみたいと思います。
 
これは、問題解決にあたって当事者家族にとっても大変重要なことです。
 
「間違った問題・目的」に対し、一生懸命に正解を出そうと、すべきでないことを効率よくする
 
ことほど、無駄なことはないのです。

前提起点となります。

その前提を誤れば、打つ手、打つ手が総崩れとなってしまいます。
 
問題解決の過誤をおかさないようにしていかなければなりません。
 
長期化(8050問題)こそ、その過誤をおかした結果なのですから。

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