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HOME > 解決支援者の現場日記 > アーカイブ > トラウマ > 7ページ目

解決支援者の現場日記 トラウマ 7ページ目

ひきこもり・不登校~原因追究は不要?③


当事者が抱えている原因になるものは、必ず痛みを伴っています。

つまり傷、トラウマです。

「今さらトラウマの解消よりも、早く働いてもらわないと」といった声も少なくありません。

腹痛がしている時に、ご馳走を前にしても食べる気がしないように、激しい頭痛があっては、

絶景を味わう余裕もないように、過去の「未解決の悲しみ」といった痛みが残ったまま、たとえ

復学したり、仕事に就いても継続していくことは困難なことなのです。

再びの不登校や転職を繰り返します。




当事者たちの現状は、過去の痛みに今を支配されている状態です。

あたかも瞬間冷却され保存された食品が、時間を経過しても、解凍されたらそのみずみずしさを

残しているかのように、あるきっかけによりトラウマが解凍されると、その痛みが生々しく再現

されるのです。

その原初の痛みともいうべきものは、愛着形成に深く関連した痛みであり、その影響は、自尊心

自己信頼感を揺るがし、衝動の抑制忍耐力、人間関係を結ぶにあたっての、共感力思いやり

自己表現力、などに強く現れるのですから、決してなおざりにはできないことなのです。

社会、集団への不適応感がまさにここに起因しているのです。




親御さんたちは、入学しても、就職しても、そこから通い続けなければならないことを忘れない

ようにして下さい。

わが子の痛み、困りごとよりも、自身の困りごとを優先させてしまえば、再びの挫折の傷みを

わが子に与えてしまうことになります。








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ひきこもり・不登校~望まぬ変化・必要な変化②


わが子が訴えてきている不登校や引きこもりという行為の意味を考えてみましょう。

これは、家族の良好なバランスの崩れを揺り戻そうとはかった、治療的行動化であることを認識

すべきです。




身体には、ホメオスタシス(恒常性)という作用があります。

体温や血圧を一定に保つ仕組みです。

引きこもり現象は、言わば家族にとっての自己治療です。

ですから、家族がそれぞれ、より良くなっていくための通過点だと捉えましょう。

わが子の引きこもりにより、浮き彫りになってくる様々な問題を、ひとつひとつ課題に変えていき、

解決していくことで、家族の絆が深まります。




変化への過敏さは、自身の子どものころからもち越されてきた、心の奥にしまい込まれた痛みが原因です。

解決されないままの問題を自覚し、受容していくことで、課題となっていきます。

主体的な課題への取り組みは、自己を成長させ、自助力を具えた、わが子にとっての救援者

なっていけるのです。









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ひきこもり・不登校~本当の問題②


自分を癒す力をもっていないと、常に防衛の姿勢しか取りません。

ですから「退散」するのです。

現状改善問題解決も不得手でありますので、痛みから逃れられている間も、状態の改善につながる

ための行動を取りません。時間をつぶすための非生産的な行動しか取らないのです。




また、防衛手段のひとつとして、戦闘態勢で、不安を怒りにすり替え攻撃的になるか、黙秘で周囲に

依存責任転嫁してきます。

自分が成した行為の後始末、後片付けが出来ないでいることが本質的な問題なのです。

つまり、自分の人生に責任をもつことが出来ないでいるのです。

そのままにはしておけない事を放置したままにしてしまっているのです。




学歴や才能といった能力的に自信がないという劣等感を抱きながら、自信をもてるための新たな

学習、訓練に取り組むことには消極的です。

変化への適応力対応力がないからです。

新たな取り組みが招くかも知れない失敗からの痛みから、逃れることだけをひたすら考えています。




こういった状態のわが子に、登校や就労を促すことが、いかに無意味なことかがお分かりになれた

でしょうか。

わが子に何が起こってしまっているのかも分からずして、「いい加減にして!」もないのです。

(続く)







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ひきこもり・不登校~本当の問題①


不登校、ひきこもり現象の陰(裏)の問題をお話ししましょう。

とかく、登校していない、働いていないことが問題とされてしまっていますが、本当の問題は

そこではありません。




ひきこもり(不登校)現象は、問題からの退散一時避難の行動です。

不登校は、学校生活を一日送れないほどの何かを抱え、ひきこもりは、職場や社会での生活を

送れないほどの何かを抱えている状態です。

その「何か」は、不安恐れ痛みを招くものです。

その痛みからの逃避が、ひきこもり(不登校)現象です。




ですから、不登校の場合、登校しなかったその日は、その痛みを味わわずに済みます。

ひきこもりの場合は、社会との接触をしていなければ、痛みを味わわないでいられます。

怯えや危険から逃れようとすること自体は、不自然なことではありません。

ですが、不登校の場合でも、ひきこもりの場合でも、その対象から逃れている間の過ごし方は

如何でしょうか?痛みを感じないでいい状態での過ごし方です。

多くが、ゲーム、インターネット、テレビ、寝床で過ごすという状態です。

ここにこそ、事態を招いた本質的な問題が現れているのです。

(続く)








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ひきこもり・不登校~心の骨折の手あて


改善すべきことは、登校していないことや、就労していないことですが、解決すべきことは別にあります。

状態が固定化し、長期化してしまうのは、改善すべきことだけに意識がいき、解決すべきことが

なおざりにされているからです。

解決すべきことこそが、わが子がもがき苦悩している本質的な問題なのです。

例えるなら、骨折して歩行が困難になっている状態です。

歩行困難は改善すべき問題で、骨折が解決すべき根本問題です。




「いつから学校いくの?」「バイトくらいしたら」といったはたらきかけは、事態をより悪化させる

ばかりか、衝動的な自傷行為や破壊行為を招きかねません。

わが子の痛みに寄りそい、自力の解決に困難を呈している問題に共に向きあっていく姿勢こそが

必要なのです。




実は長期化の要因にあるのは、本人が動こうとしないことではなく、適切な対処ができないでいる

親たちにあるのです。

動けないでいる本人の自発的な行動を期待するのみで、問題を先送りしてしまっているのです。

また、強制的な促しにより事態をこじらせてしまった結果、長期化を招いているのです。

本人は動けない状態にあるという大前提をゆめゆめ忘れてはなりません。




親の対応が長期化を招いているということは、ここに不登校、引きこもりにピリオドを打てる

決定因子があるということです。

自己の存在価値を見いだせず、生きていく意味を見失っているほどのわが子の、その不確かなやる気に

依存
するのではなく、適切な援助有害な救済を見誤ることなく、親が主体的に「わが子の心の骨折」

の手当てを最優先としていくことで、脱・引きこもり(不登校)が実現するのです。








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ひきこもり・不登校~自分をゆるし和解する④


「ゆるし」のもうひとつは、「赦し」です。

これは、自分を断罪し貶めないことです。

自責の念から解放することです。




前々回①でも述べたように、自分を責めれば自尊心も傷つけられ、行動が止まるか、贖いでわが子に

隷属してしまうようになります。

ひきこもり現象自体が、「自己贖い」という認識が必要です。

ひきこもり者たちは、親の期待を裏切った、親に依存することで迷惑をかけている、社会からも

疎外される人間だ。といった思いで、自己贖いとして、自分を粗末にあつかうのです。

大事なのは、②でも述べたように「今」です。

過去どうしたではなく、今過去から何を学びどう活かすかです。

常に今目の前のことに、どう対処していくかが重要です。




これまでの支援活動の中でも、わが子に向き合うために早期退職までして、とことんわが子と対話を

繰り返した父親もいました。

わが子から罵られる状態でしたが、本来の親子関係を取戻し、二人で仕事を始め、後に再会した時に

「いい右腕です」と父親が嬉しそうに話していました。

また、私の目の前で、一瞬の隙に拳を突き出し母親の顔面に怪我をさせた青年がいましたが、母親は

痛みに顔をゆがめながらも、毅然とした態度で思いを伝えました。

以降何度も何度も一方通行であっても思いを伝え続け、献身的な取り組みで回復を支えていきました。




回復をなしていったひきこもり者たちは、その背景に、潔く自身の過去を振り返り、改めるべき

ところを積極的に改めていった親の存在があります。

ひきこもり者たちは、自身の痛みをただただ分かってほしいという思いでいます。

自身の中だけで抱え込んできた苦悩の意味を分かってほしいんです。

親の理解がわが子に安心感を与え、わが子もまた現状を受け入れ、前進していく勇気をもつことが

出来るようになるのです。

現実から目をそむけず、謙虚に向きあい、適切に対処していくその姿勢態度信頼感も与えるのです。




一生懸命わが子を育ててきたはずです。

だからここまで大きくなっているのですから。

足りなかったところは、これからおぎなえばいいんです。

傷ついた経験は自分にもあるはずです。

そのことを思い出し、わが子の今に共感してあげましょう。

わが子の痛み、自身の痛みにも寄り添って、先ず自身と和解してください。

自分を責めれば、自分を敵にまわします。

自分を敵にまわせば、事が思うように進みません。

和解して味方につけるのです。

そしてわが子にも、自分を味方につけることを教えてあげてください。







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ひきこもり・不登校~「8050問題」は防げる?③


親が解決のための行動が取れない理由は何でしょうか?

対外的には、いわゆる世間体です。

ある全国的組織の家族会の創設者(故人)は、「病気と思えば世間体はかわせる」と言っていましたが、

人格障害社交不安障害発達障害と、次から次へと病を出してきましたが、組織が大きくなるばかり

で、実情は解決どころか「8050問題」へと発展してきました。




世間体をかわすのではなく、世間の未熟さからの歪んだ偏見を、意に介さないでいられる自分を

構築することが重要です。

内に対しては、わが子の嫌がる顔や反発を恐れてしまっていないでしょうか。

これは、親自身が傷、トラウマを抱えていることが多いようです。

わが子から頼られたい、必要とされたいという思い(傷)から、世話をやくことで頼らせるように

コントロールします。

一方で、子どもは「愛されたい」という思い(傷)から、愛されている実感を得たく、世話をやかせる

ことで親をコントロールします。

これが共依存という呪縛です。

互いの求めが一致し、抜き差しならぬ関係をつくってしまい、親離れ、子離れといった互いの自立を

妨げてしまうのです。




では、親自身が抱えているトラウマとは何でしょうか?

これもまた、生い立ちの中で受けてきた自己信頼、自尊心のゆらぎです。

自尊心にゆらぎがあると、他者をコントロールすることでそれを支えようとします。

わが子から背を向けられることで、その傷ついた自尊心を今また大きく揺さぶられてしまって

いるのです。

これらのことから、解決のために今何が最も求められるかが見えてくると思います。

(続く)








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ひきこもり・不登校~環境因としての家庭②


安定していない家庭の場合、緊張が続きます。

具体的には、親の病気(特に精神疾患)や性格気質の問題で、感情の起伏が激しかったり、意思や

行動に一貫性が無かったり、ありたい自分と現実の自分に乖離がある「自己不一致」状態に親が

あると、不満感から抑うつや苛立ちがあり、そういった状況が子どもに情緒的混乱を与えます。




また、父親の転職が多かったり、最も影響が大きいのは、両親間の不仲であり、母親と祖母の

いわゆる嫁姑問題も子どもを落ち着かせません。

前回のブログで事例を紹介しましたね。




安全や安定を欠いた家庭では、子どもたちは常に不安や心配があり、安心することができないで

います。

わが子の揺りかごを揺らしていた手で、わが子の人生を揺るがしてしまうのです。

子どもの日常からの逸脱行動は、家族病理の症状でもあり、同時に子どもにとっては自己治療

試みでもあるのです。




「病は薬で治すものではなく、病が私たちのあり方、生き方を治す薬なのだ」
アーノルド・ミンデル(プロセス指向心理学創始者)








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ひきこもり・不登校~環境因としての家庭①


不登校、ひきこもり現象は、身体のホメオスタシス(恒常性維持機能)と同じで、家族バランスの

乱れを揺り戻そうとしている現象です。

家庭は、あたかもモビールのように、家族それぞれが無意識に安定をはかるために、バランスを

取ろうとしています。

そのバランスの崩れに一番敏感なのが、子どもたちなのです。




どういった環境から生じるのかを述べてみましょう。

安全安定安心を欠いた家庭環境です。

とは言え、特別な家庭ではないということに注視する必要があります。

日常性の中で、気づかない内につくられた状態です。




安全を欠くということは、危険ということですね。

どういった環境が危険か。

典型的なものは、虐待ですね。

これは明白であり説明はいらないでしょう。

これこそ特別な家庭の例ですので省きます。




例えば、親からの恫喝です。

躾などの場面で、激しく叱責され、手が出たり、物を投げられたりがあると、子どもは自分の身を

守ることに必死にならざるを得ません。

子どもにとっては、親の大きな声や金切声も怯えとなります。




気づかれにくいのは、親の態度の不公平さです。

きょうだいがいる場合、立場や資質の違いから明らかに対応が違うと、冷遇されている方に

とっては、わが家は危険地帯になります。

また、親の都合が常に最優先されてしまい、自分の意志はほとんど考慮されないのも公平とは

言い難いですね。

常に親の期待にかなった行動をしていなければ身を守れないわけですから、失敗を極端に避けよう

としたり、責任を回避するような行動を取るようになります。




以前双子の姉妹のひきこもり事例でこういうものがありました。

姉の方がひきこもっていたのですが、この姉妹は、二卵性で双子とはいっても顔が違いました。

姉の顔は母親、妹の方は父親似だったのです。

同居していた父方の祖母つまり姑と嫁(母親)の仲が悪く、祖母は、自分の息子と似ている妹の方

ばかりをかわいがりました。

母親は、長女を必死に守ろうとはしましたが、かえってそれが姑の機嫌を損ね、長女の立場を

悪くすることもあったようです。

父親はと言うと、この嫁姑の間に一切入ろうとせず、傍観していたそうです。

私が関わりだした時には、すでに祖母は他界されておられましたが、母親は「今でも襖がスッと

開いて、姑から名前を呼ばれる気がして怖くなることがあります」と言っておられました。




赤ん坊でさえ、ベビーベッドをのぞき込む親たちの表情や声、周囲の物音から、自分が育っていく

環境が安心できる安全な環境か否かを感じ取っている(基本的信頼感)と言われるくらいです。

この双子の長女は、

「自分は望まれて生まれてきていない。妹だけが生まれてくればよかったんだ」

「自分のせいで、お母さんもおばあちゃんからいじめられる」

と思い込んで生きてきたのです。

(続く)








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ひきこもり・不登校~人格形成の基盤作り②


前回、生き方の起点、前提ということを述べましたが、生きていく上で最も大切なことは、

〈人との架け橋〉をつくれる子に育てるということではないでしょうか。

不登校、ひきこもり者たちは、人から遠ざかる、身近にしない生き方をしています。

架け橋をつくれない状態です。

なぜか?




自尊心自己信頼感が健全に育っておらず、自己認識が極めて否定的だからです。

そのために、自己受容ができず、健全なアイデンティティ(自分らしさ)が構築できず、主体性

欠いた依存的な生き方になってしまっているのです。

あるがままを容認されず、愛着欲求の未充足の状態です。

これを私は“乞い煩い”と言っています。

温もりを乞うているのです。




親はわが子への愛おしさから、勝手な期待をかけていきます。

その期待に応えてくれている時は愛するのですが、そうでない時は愛さないといった

「条件つきの愛情」となってしまってることが少なくないのです。

「そんなことは決してない」と言いたいでしょうが、機嫌にそれが現れているものです。

無償の愛は難しいものです。




親子という間柄で気をつけなければならないことは、子どもとの関係性の乱用です。

乱用というのは、親の都合で子どもを動かすことです。

「あなたのためよ」と言いながら、どっこい自分のためだったりするわけです。

自分の意志を尊重されなければ、子どもは自尊心をはぎ取られ、自分を無価値な存在と認識します。

そうなれば、『生き辛さの正体②』で述べた「見知られ不安」「さとられ不安」といった不安感を

抱えます。

他者との関係が親密な関係になることに恐怖するのです。

親密さというのは、自分らしさをお互いが認めあえている状態のことです。

自分らしさが無価値であれば、当然人を遠ざけます。




“乞い煩い”の原因は、わが子を愛してこそいても、わが子への敬意が足りず、エゴでわが子を

吞み込んでしまった結果なのです。








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