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HOME > 解決支援者の現場日記 > アーカイブ > 家庭問題: 2020年12月

解決支援者の現場日記 家庭問題: 2020年12月

ひきこもり(不登校)~自己放棄による空虚感


自己認識がなぜ否定的になってしまうのか。

それは、自分が自分であることを放棄してしまうことでの空虚感からです。

親からありのままを認めてもらえなかった結果によるものです。




親は、わが子への愛おしさから、自身の都合による期待をかけてしまいます。

「自分の子であるからこうなってほしい」といったものです。

そうすると、その期待に応えてくれた時には、惜しみない愛情をかけるのですが、そうでない時には、

称賛もなく残念な表情を見せてしまう。

不満をもらすことだってあるかも知れません。

これを〈条件つきの愛情〉と言います。

「期待に応えれば」という条件がついてしまっているのです。

これでは子どもは、ありのままでいるだけでは、愛してもらえないと認識します。




親の求める虚像に適応する(愛される)ために、自身を否定し、裏切り、本来の自己を虚像の向こうに

押しやり、その結果、自分が自分の敵となり、自分自身と「本来の自己」との葛藤が生じ、それが

自身を嫌う源泉ともなるのです。

ありのままの自分を認めてもらえないと、自分を認めてくれない親の目と同じように、自分を否定的に

見るようになり、自分を受け入れることに躓き、これが他人に対する怖れ(対人恐怖、社交不安)にも

発展するのです。




自分が自分でいられるためには、自分が何者であるかを親に定義させないことが、最も重要なことなのです。






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ひきこもり(不登校)~人生のスタートから②


人生最初期身につく、自他に対する信頼の基礎になる体験「基本的信頼感」について前回述べましたが、

ここから「基本的な構え」が発達していきます。

交流分析では、幼いころに両親とのふれあいが主体になって培われた、自己、他人、世界に対する

基本的な反応態度を「基本的な構え」と呼び、つぎの4つをあげています。

自他肯定
自己否定・他者肯定
自己肯定・他者否定
自他否定

①であれば問題はありませんが、それ以外であると色々な問題が出てきます。




肯定というのは、「私は生きることを保証されている」という安心感と、「私は生きていくことができる」

という自分の能力に対する自信の二つを意味します。

ですから否定は、安心できない、愛されるに値しない、できない、何をやってもダメ、

間違っている。
などになります。




この「基本的な構え」が人生早期にできてしまうと、それを強化しながら、生涯を通して

その立場を前提に、他者との関わりの中で自分を守ろうとして歪み、生き辛さを抱えていくのです。

ひきこもり(不登校)者たちは、ほとんどが②と④の状態です。

これを起点におけば、両親が成していかなければならないことは、自ずと分かってくるのではないですか?






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ひきこもり(不登校)~人生のスタートから①


不登校、ひきこもりの問題は、学校や社会といった世界に適応が困難な状態にあるということです。

その原因のひとつにコミュニケーションの障害もあるわけです。

これらがどこから来ているかです。




例えば、人生最初の発達課題として、受胎後33ヵ月間に形成される〈基本的信頼感〉というものがあります。

乳児期の授乳やスキンシップに始まる応答的な適切な刺激により、子どもは常に愛されている、

大事にされている、〈自分は存在する価値がある〉という自分への信頼の感覚がもてます。

これは、自律性の要石となるものです。

また〈この世はいつでも守ってもらえ信頼に足る〉という内的安全感がもてます。

自分をとりまく世界への信頼感です。

これらは、適切な関わり、環境の用意があればです。

親を通して、他人や世界の存在の意味を感じとるようになるのです。




人生早期に芽生える自他に対する最低限の信頼感は、将来の人間関係に際しての安全弁となる

わけで、それが備わっていなければ、生涯を通して、安定した人間関係をつくり、維持していく

ことが困難となるのです。

まさに、「三つ子の魂百まで」なのです。

(続く)






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ひきこもり(不登校)~報道のリスク⑥


最後に挙げるのが、社会問題へのすり替えです。

非正規雇用の恒常化、派遣切り等の雇用不安、世間体・偏見・差別といったことが、

ひきこもり現象の背景にあるから、一家庭の問題にせず、社会全体で対応していくべきだ

といった論調です。

これはその通りではもちろんあるのですが、なにも問題の背景に社会の様々な歪みが関連

していることは、ひきこもりに限りません。

学校のいじめ問題などもそうです。




ですが、その社会をつくっているのは、一人一人の人間です。

一人一人が、自分がどう生きていくかに責任をもっていくかが重要ではないでしょうか。

体のいい社会への責任転嫁にならないようにしなければなりません。

「みんなでやっていきましょう!」なんて言ってるうちは、誰も動き始めません。

それぞれが「私がやっていきます」と言い出さないかぎり、社会は変わらないでしょう。

ひきこもり、不登校は、毎日継続して続いているものです。

社会変革を待っている間に、あっという間に「8050問題」です。




家庭も小社会なのですから、子どもに安心を与えられない家庭、親の価値観によるわが子への

偏見・差別が生じないように努めていけば、いじめ問題もひきこもりも無くなっていくでしょう。

家庭、家族の意識変革こそ急がれるのです。

昔から『修身斉家治国平天下』と言って、世の中の安寧を創り出す指針が示されています。

天下を治めるには、まず自分の行いを正しくし、次に家庭をととのえ、次に国家を治め、

そして天下を平和にすべきである。







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ひきこもり(不登校)~報道のリスク⑤


ひきこもり者の自堕落な生活は、セルフ・ネグレクト(育自放棄)と言えます。

これは、こういった生き方が自分には相応しいという自己認識になっていることや、家族に

「期待できない子どもですから、もう期待しないでください」というメッセージでもあります。

それまでに、懸命に周囲の期待に応えてきて力尽きたという経緯があります。

 



ひきこもる行為は、自己治療でもあります。
 
ひきこもる以前からの生きにくさがあり、他の選択肢を持ちあわせなかったことで唯一の方法

ということでひきこもったのです。

そうなるにはそうなるしっかりした原因・理由が必ずあるのです。

 
ですから、精神疾患、障がい・発達障がい等の症状としてのひきこもりと、社会的ひきこもりでは、

問題点がまったく違います。

同列に並べ報道するものではありません。
 
ましてや、ひきこもり者による様々な事件は、「ひきこもり」がさせているわけではなく、周囲に

理解者がおらず、追いつめられたことにより生じたものです。




人は病気でなくても、偏見、差別もあるし、自他を害したり、「魔がさす」といったような行動も取る

生き物であることを忘れてはいないでしょうか?

(続く)






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ひきこもり(不登校)~報道のリスク④

 
次にあげる問題点は、ひきこもる行動だけを問題視している点です。
 
あたかも勝手に一人でひきこもってしまっているといった表現が見受けられます。
 
どんなことでも、ある状況が成り立つのは、環境条件といったものがそろっているからです。
 
ひきこもりという現象も、ひきこもれる環境やそれが継続する条件がそろっているからこそ
 
生じています。
 
それは決して本人一人ではそろえられないのです。
 



ひきこもり現象は、機能不全多問題家族に現れる現象です。
 
家族の機能というのは、「生み、育てる」です。
 
機能不全というのは、その機能に不具合が生じている状態を指します。
 
とは言っても、特別な家庭というわけでもありません。
 
全く健康に問題が無い人がそういないのと同じように、現代家庭は全般的に何らかの機能不全を

起こしています。
 
不登校の場合、親が教職員であるケースも少なくありませんし、学校側のいじめや心理的虐待

といった問題から生じている場合もあるのですから。
 



ひきこもりにしろ不登校にしろ、背景にある種々の問題が重層的に絡みあって生じています。
 
例えば、わが子の一大事に両親の意思統一、協力体制がはかれないというのもそのひとつです。
 
また、ひきこもりの定義に「家族以外の~」とありますが、他人のみならず家族間の

コミュニケーションも不全状態です。
 
特に父親の場合、本人と数年も会話をしていないというのもめずらしくありません。
 
くの問題があり、わが子のひきこもり(不登校)解決に集中できないような状況にある

という意味での多(他)問題家族です。




ですから、ひきこもる行動だけを問題視するような報道では誤った認識をもたせ、前回も述べた

ような〈引き出し屋〉のような悪質業者の横行までをももたらすのです。

(続く)






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ひきこもり(不登校)~報道のリスク②

 
報道により一番印象付けられることとしては、「ひきこもるわが子に苦しめられる親」
 
でしょうか。
 
あたかも親は何か被害でも受けているといった印象が強調されることが多いようです。
 
親の被害者意識は、本人のみを問題視することになりかねません。
 



ひきこもる原因、特に長期化には実は親が深く関わっています。
 
原因に関しては、子どもの発達過程の心理社会的危機に、適切な危機介入ができていなかったのです。
 
成長の過程で、子どもは様々なことに迷い、悩み、自分でいることに自信を失うような
 
場面が出てきます。
 
そういった危機的状況にわが子があることに気づき、適切な関わり(支え)が出来ていなかった
 
ことが背景にあります。
 



また、不認証環境と言って、子どもが親から見て正当に位置づけられていない状況にあった

場合も少なくありません。
 
具体的に申しますと、親による立場の乱用です。
 
つまり、親子という関係性の中で、子どもの立場、意思の尊重が足りず、常に指示的、
 
支配的な関わり方があったことで、子どもは混乱し、結果ご乱心状態になってしまったのです。
 



長期化は、ほぼ親の問題です。
 
「わが子は動けない」ということを大前提として対策を打っていかない限り、長期化するのは
 
必然です。
 
長期化は、一日目から突然数年間のひきこもりになるわけではありません。
 
昨日と同じひきこもり生活を今日も繰り返した結果です。
 
その繰り返しの間、動けないわが子に対してどういうはたらきかけを続けてきたでしょうか?
 
例えるならば、TVなどでありますが、自力で立てないほどの体重になり、働けないばかりか

命の危険もあると救済を求める番組がありますね。
 
体重は、いきなり200キロを超えるようなことはありません。
 
親も子も体重の増加に気づけていながら、その経過を見送った結果です。
 
ひきこもりの長期化も同じなのです。
 



ですから、誰が困らされているではなく、当事者家庭の「家族」という関係性への援助、
 
救済こそ支援としてはかっていかなければならないことなのです。
 
もがいているのは親だけではありません。
 
ひきこもり者こそ、親、家族からの救済を強く求めていることに気づいて頂きたい。

(続く)






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ひきこもり(不登校)~適切な援助とは?⑤

 
「8050問題」で明らかなように、長期化が進んでいます。
 
これは、不登校も同じです。
 
長期化した原因を親に尋ねてみると、「どうしていいのか分からなかった」という答えが

多いようです。
 
「どうすればいいのか分からない」それは、本人も同じです。
 
分からないからわが子は動けないのではないですか?
 
だったら、見守っていて大丈夫ですか?
 
親御さん自身と同じ状態なのですよ。
 
「適切な援助①」でも述べましたね。
 



どうすれば耳を傾けてくれるか。分かるために、わが子を理解するために足を使って
 
行動を起こすことです。
 
なぜ行動ができないでいるのでしょうか?
 
「どうにかなれば」という期待ばかりで、「どうにかしなければ」という意識にまでに
 
至っていないからです。
 
つまり、環境変化、事態の好転が自然と起こらないかと願うばかりで、自分自身が
 
変わっていかなければという気づきが得られていないのです。
 
親が主導的に取り組み、「必ず助ける!」決心することでこそ、事態は確実に動き出します。

(終わり)





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ひきこもり(不登校)~適切な援助とは?④


解決のための「適切な援助」に関して述べてきましたが、一方でそれを阻むものがあります。
 
先ず、そもそも「支援」が必要な状態にあるという意味が分かっておられない親御さんが
 
少なくありません。
 



どういう状態にあるから支援が必要なのか?
 
登校出来ていないとか、働いていないからではないのです。
 
ひきこもり(不登校)者たちは、周囲からの促しに対して、素直に行動に移せる状態にありません。
 
ですから、その促しに対して反発抵抗するのはあたりまえです。
 
だから支援が必要なのです。
 
「はい、分かりました。働きます」とすぐに動き出せるくらいなら、支援なんか必要ありません。
 
ですから、背中を向けられることで「支援がままならない」と言うのは、おかしな話です。
 



「耳を貸さないから」「返事もしないから」「嫌な顔をされるから」

「なすすべ無し」
 
と、はたらきかけをやめてしまうから長期化するのはあたりまえです。
 
「ただの促しでは動か(け)ない」を前提として、どうすれば耳を傾けてくれるだろうかを
 
考えていく必要があるのです。

(続く)






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ひきこもり(不登校)~適切な援助とは?③

 
「何をどうしたらいいか」ということで言いますと、現実把握から傾向を読み取り、対策

打ち続け、同時にわが家にある好ましくない習慣枝打ちをしていくということです。
 



わが子がどういう状況にあるのか、わが家がどういう事態になってしまっているのかを

先ずしっかりとつかまなければなりません。

ただ登校させようとしていませんか?

ただ外出させようとしていませんか?

ただ人と関わらせようとしていませんか?

ただ働かせようとしていませんか?
 
何が起こってしまっているのかの傾向も見えていなければ、対策の打ちようがありません。

誤った問題認識ではたらきかけを行えば、事態はかえって悪化します。
 



そもそも現状の事態を招いたものは、わが家の悪習慣です。
 
「わが家の常識、社会の非常識」という言葉も聞きますが、わが家の中での当たり前(通常)
 
決して、正常とは限りません。
 
異常が通常になっていないか、改めて振り返る必要があります。
 
ひきこもり(不登校)も、長期化していくと、それに慣れ、当たり前になってしまいます。
 
わが子が自室に閉じこもっていることが、当たり前のこととなり、それを前提にした

家族の生活の仕方が構築されていきます。違和感さえ感じなくなるのです。
 
当たり前になっていることが、決して当たり前ではなく、一日も早く改善を要する状態だ

ということを忘れないようにしなければなりません。
 



庭木の剪定や森林の伐採は、全体を活かすためのメンテナンスです。
 
雑草(好ましくない習慣)を刈り取り、日当りをよくすることで、残された木々が寄り善く

繁茂するようになるのです。
 
雑草がはびこり、木々が生い茂り、明るい日の光が閉ざされ、社会から隔たった暗い森

となってしまっていませんか?

様々な生命を生かし、清々しい息吹(酸素)を放出し、さらには栄養分のたっぷり入った水を

大海にそそぎ、多くの魚たちを育てている森にわが家をしていきましょう。

(続く)
 





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